当記事では、映画『紅の豚』のヒロイン・ジーナについて語ります。
ジーナはジブリ映画・特に宮崎駿監督作品では異色の大人のヒロインです。
ジーナのプロフィールや名言、モデルとなった人物について紹介しますので、参考になれば幸いです。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は映画「紅の豚」を一度は見ている方向けに執筆しています。
結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。
『紅の豚』の異色のヒロイン・ジーナって何者?
「アドリア海の飛行艇乗りは、みんなジーナに一度は恋をする」と言われるほど、ジーナは絶世の美女でマドンナ的存在です。
宮崎駿監督では珍しく、8頭身で大人のヒロインとして描かれています。
ジーナの基本的な情報は以下のとおりです。
本名 | ジーナ ※通称マダム・ジーナ ※フルネームは不明 |
年齢 | 30代後半 ※ポルコと同世代 |
職業 | ホテル・アドリアーノの経営者 |
声優 | 加藤登紀子 |
スタジオジブリは本職が声優ではない方を多く起用することで有名ですが、ジーナの声優も本職はシンガーソングライターで女優の加藤登紀子さんです。
ジーナとポルコの関係性
ジーナとポルコの関係性についても紹介しておきます。
ジーナはポルコとの昔との馴染みで、ポルコを本名の「マルコ」と呼ぶ作中でも数少ない人物です。
「もうあなただけになっちゃったわね。古い仲間は・・」
こういったジーナのセリフからも、昔から互いをよく知るかけがえのない存在であることが読み取れます。
過去3度の結婚歴
ジーナは3人の飛行艇乗りとの結婚歴を持っています。
3人ともポルコやジーナとの昔からの馴染みですが、既に亡くなっています。
「私は3回飛行艇乗りと結婚したけど、一人は戦争で、一人は大西洋で、最後の一人はアジアで死んだって・・」とジーナ自身が語っています。
『紅の豚』の作中で実際に登場するのは1人目の夫・ベルリーニだけです。(後の2人は名前も不明)
ベルリーニはポルコの人間時代の回想シーンで登場します。
『紅の豚』におけるジーナの注目ポイント
ジーナは『紅の豚』における重要なキャラクターですが、特に注目したいポイントを2つ紹介します。
- ジーナが歌うシャンソン『さくらんぼの実る頃』
- ジーナの賭けの結末はどうなった?
順番にご覧ください。
ジーナが歌うシャンソン『さくらんぼの実る頃』
ジーナが作中で歌うシャンソン『さくらんぼの実る頃』は実際にジーナの声優を務めた加藤登紀子さんが歌っています。
歌手の加藤登紀子さんを起用したからこその見どころですね。
『さくらんぼの実る頃』はフランスの歴史ある楽曲で、以下のような歴史を持ちます。
- 1970年代のパリにおける労働者革命、パリ・コミューンで歌われた歌
- パリ・コミューンへの弾圧、虐殺を受けて追悼の意を込めてパリ市民により歌われた
- 当初はさくらんぼの実る頃の恋と失恋を歌った曲だったが、コミューン参加者への追悼の歌へと意味合いが変化した
なかなか重い歌ですが、ジーナやポルコが生きる時代は戦争の真っ最中です。
時代背景や歌の意味にも目を向けてみると、『紅の豚』には追悼の意や反戦の意志も込められていると考えられます。
ジーナの賭けの結末はどうなった?
紅の豚の最後のナレーション「ジーナさんの賭けがどうなったかは私達だけの秘密・・」と聞いて悶々としている方は多いのではないでしょうか。
ポルコがジーナの元を訪ね、ジーナは賭けに勝った、というのが多くのファンの考察です。
こちらは考察のしがいのあるテーマですので、以下の記事で詳細にまとめています。
ぜひ、合わせてご覧ください。
ジーナの名言
『紅の豚』の重要人物であるジーナは、作中で数々の名セリフを残しています。
ここでは特に目立った3つのセリフを紹介します。
- どうやったらあなたにかけられた魔法が解けるのかしらね
-
ポルコとの会話の中でさり気なく生まれたセリフですが、「魔法」というキーワードを含む貴重なセリフです。
ポルコは自分で自分に豚になる魔法をかけたと言われていますが、ジーナだけがその理由を知っているとされています。
【紅の豚】ポルコはなぜ豚の姿?魔法にかけられた理由を考察 映画「紅の豚」を見て多くの方が抱く疑問が「ポルコはなぜ豚の姿なんだろう?」ということではないでしょうか。 「紅の豚」公開当時は、実際にそのような質問が宮崎駿監… - マルコ、今にローストポークになっちゃうから……私イヤよ、そんなお葬式。
-
カーチスに敗れたポルコを心配するジーナの、ユーモアあふれるセリフです。
このセリフの返しがポルコのもっとも有名な名言「飛ばない豚はただの豚だ」です。
【紅の豚】名セリフ「飛ばない豚はただの豚だ」の意味を考える 紅の豚の名セリフと言えば「飛ばない豚はただの豚だ」を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。 (時々「飛べない豚はただの豚だ」と誤解している方もいますが・・… - あなたもう1人女の子を不幸にする気なの?
-
カーチスとの決闘中、ダウンしているポルコにかけたセリフです。
サラッと「もう1人」と言っているところに「いつまで私を待たせるんだ」というニュアンスが込められていますね。
ジーナに関する裏話
『紅の豚』のストーリーからは読み取れない、ジーナの裏話についても紹介します。
ジーナは原作には一切登場しないキャラクター
ジーナは『紅の豚』の超重要人物ですが、実は原作の段階では登場しません。
原作で登場するヒロインはフィオだけでした。
※原作『飛行艇時代』については以下の記事で紹介しています。
フィオの登場は物語の中盤であるため、冒頭にも華を持たせる意図で作られたのがジーナです。
また、ジーナはポルコが豚の姿である理由を知っているとされています。
こうした設定が付け加えられる中で、ジーナは『紅の豚』の重要人物へと変化していったのです。
(編注:ポルコが豚になった理由を問われて)
宮崎は「ジーナというキャラクターを作ったんです。この人がその理由を知っているんです」と鈴木に告げたという。
ジーナは初期のストーリー案の中ではサブキャラクターの一人だったが、ここへきて大きな役回りのキャラクターとしてクローズアップされるようになった。
ジブリの教科書7紅の豚(文春ジブリ文庫)より引用
ジーナの国籍はアルゼンチン?
『紅の豚』の舞台はイタリアです。
そしてジーナは作中でフランスのシャンソン『さくらんぼの実る頃』を歌います。
ただ実はジーナはアルゼンチン国籍である、という裏設定があると噂されています。
ジーナが所有している船に掲げられている旗に注目。アドリア海が舞台なのに、アルゼンチンの国旗風の旗が掲げられているのです。これはジーナがアルゼンチン🇦🇷国籍だという裏設定があるからなんだそうですー😊知らなかったー😆❤️ #ジーナ #ジーナの船 #ジーナはアルゼンチン人 #紅の豚 #秋のジブリ pic.twitter.com/hnpDEUdtuc
— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) November 2, 2018
ジーナのモデルは実在する?
ジーナのモデルとなった人物は、宮崎駿監督自身は公言していません。
ここでは、ジーナのモデルではないかと言われる以下3つの「説」をご紹介します。
- ジーナ・ロロブリジーダ(イタリアの女優)
- マレーネ・ディートリヒ(ドイツの歌手・女優)
- 加藤登紀子(歌手 ※ジーナの声優)
ジーナ・ロロブリジーダ(イタリアの女優)
名前自体が「ジーナ」であることから、ジーナのモデルではないかと噂されることが多いのが、ジーナ・ロロブリジーダです。
1927年生まれのイタリア人の女優で、ハリウッドデビューも果たしています。
世界的な人気を博した美貌は『紅の豚』のジーナに通ずるものはあるものの、「モデルである」と断言するには根拠に乏しい印象です。
マレーネ・ディートリヒ(ドイツの歌手・女優)
ジーナの声優を務めた加藤登紀子さんの仮説が、ジーナのモデルはマレーネ・ディートリヒ(ドイツの歌手・女優)であるというものです。
ひとつ考えた。ジーナはマレーネ、デートリヒがモデルだ、という仮説。1901年生まれのマレーネはアメリカのハリウッドも捨て、ヒトラーとも対立した。紅の豚は1930年代、ジーナは30代。アメリカのハリウッド映画への批判は、カーチスとの対話と、ヒトラー嫌いは、ムソリーニへの嫌悪と重なる
— 加藤登紀子 (@TokikoKato) August 30, 2012
マレーネ・ディートリヒは「100万ドルの脚線美」と称えられ、歌手・女優として世界的な人気を博していました。
一方で、ドイツ人でありながら反ドイツ(反ナチス)の立場を取り、アメリカ・フランス両国から勲章を贈られています。
こうした生き様が、激動の時代を生きるジーナにも重なるというわけですね。
加藤登紀子さんはこの考察を実際に宮崎駿監督にぶつけています。
私、ジーナは米国に渡り、女優・歌手として活躍したドイツ出身のマレーネ・ディートリヒをイメージしたんじゃないかと思ってるんです。一度、宮崎監督に『ジーナはディートリヒがモデルじゃないですか』って直接聞いてみたら、宮崎監督はニヤニヤ笑いながら、『さぁ、どうでしょう? ご想像にお任せします』なんてけむに巻かれてしまった。
加藤登紀子さんインタビューより引用(出典:https://style.nikkei.com/)
宮崎駿監督が公言する気がない以上、正解でも間違いでも明言はしないでしょうが、「ご想像にお任せ」とは面白い回答ですね。
個人的には加藤登紀子さんの考察、マレーネ・ディートリヒは面白いと感じました。
加藤登紀子(歌手 ※ジーナの声優)
ジーナの声優を務めた加藤登紀子さん自身がジーナのモデルであると考える説です。
ジブリファンの間でも有力な説として知られています。
『紅の豚』の女性スタッフの座談会の中でも、以下のような発言がありました。
(編注:ジーナのモデルを聞かれて)
「以前宮崎さんが、手持ちの女性の種類が限られていて、ジーナがたいへんだっておっしゃっていたんです。ジーナみたいな人がいなくて描けないって。」
「加藤登紀子さんかな?」
「でも保田さん(編注:スタジオジブリスタッフ)の雰囲気も入ってましたよね。あの辺の大人っぽい女の人をぜんぶ総合する・・」
ジブリの教科書7紅の豚(文春ジブリ文庫)-スタジオジブリ女性スタッフ座談会より引用
宮崎駿監督をよく知るスタジオジブリスタッフから見ても、加藤登紀子さんは真っ先に候補があがる女性というわけですね。
声優ではない加藤登紀子さんに、声優の仕事をオファーしたと考えても辻褄が合います。
ジーナのモデルはあくまでも想像の域を出ませんので、ぜびご自身でも考察してみてくださいね。
『紅の豚』のまとめ記事はこちら!
『紅の豚』の都市伝説や考察のまとめなど、『紅の豚』の魅力を1記事にまとめています。ぜひ合わせてご覧ください。
『紅の豚』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『紅の豚』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- ジブリの教科書7 紅の豚(文春ジブリ文庫)
- 宮崎駿の雑想ノート(大日本絵画)
- スタジオジブリ絵コンテ全集7 紅の豚(徳間書店)
- ジブリの教科書7 紅の豚(文春ジブリ文庫)
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過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。
ポチップ - 宮崎駿の雑想ノート(大日本絵画)
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『紅の豚』の原作『飛行艇時代』が収録されています。
- スタジオジブリ絵コンテ全集7 紅の豚(徳間書店)
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『紅の豚』の制作に使用された絵コンテです。
ポチップ
なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。