当記事では、スタジオジブリ最新作『君たちはどう生きるか』について、徹底解説します。
あらすじの解説はもちろん、ストーリーの謎の考察まで行います。
当記事はネタバレを含みますのでご注意ください。
以下の記事ではネタバレに配慮しながら『君たちはどう生きるか』の感想を綴っています。
ネタバレをできるだけ避けたい方はこちらからご覧ください。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事はスタジオジブリ公式から提供されている場面写真を使用しています。
外部リンク:『君たちはどう生きるか』場面写真
長めの記事になりますので、目次(↓↓)から気になる所にジャンプするのもおすすめです。
【まずは超簡単に】『君たちはどう生きるか』のあらすじ
まずは『君たちはどう生きるか』の全体像をつかんでいただくため、あらすじを手短に超簡単にまとめます。
『君たちはどう生きるか』の超概要
- 舞台は太平洋戦争中の1940年頃の日本、主人公は裕福な家庭で育つ少年・眞人(まひと)
- 眞人は火事で母・ヒサコを亡くし、父と父の再婚相手・夏子とともに田舎に疎開する
- 母を亡くした悲しみや、環境の変化、田舎の子ども達からのいじめに眞人は苦しみ孤立する
- 「母は死んでなんかいない」と人間の言葉を話す奇妙なアオサギに眞人は襲われる
- ある日、夏子が行方不明になる。夏子が森へ入る姿を目撃していた眞人はその後を追う
- 森の中には奇妙な塔があり、そこには例のアオサギと謎の人物が暮らしていた
- 夏子を追う眞人はアオサギに導かれ、異世界(下の世界)へと落ちていく
- 異世界では頼もしい仲間・キリコに助けられ、眞人はキリコから異世界の仕組みを教わる
- 「夏子の居場所を知っている」というアオサギと再会、キリコの提案で眞人はアオサギと行動することに
- アオサギの案内で夏子の居場所にたどり着くも、そこは凶暴なインコの集団に占拠されていた
- インコに囲まれてしまう眞人だったが、火の魔法を使う謎の少女・ヒミに救われる
- ヒミの案内で夏子のいる産屋にたどり着くも、眞人は夏子に拒絶されてしまう
- 産屋で気絶した眞人は、異世界を創造する大叔父と夢の中で出会い「後を継いでほしい」と頼まれる
- 目を覚ました眞人はアオサギ、ヒミと合流し、大叔父の元を目指す
- 大叔父は「悪意のない人にしかできない仕事」として眞人に異世界のバランスを保つことを託す
- 眞人は自分は悪意を持つ人間であることを告白し、これを拒否、異世界は崩壊する
- 無事現世に戻った眞人は、アオサギと別れ、元の生活へと戻っていく
- それから2年、夏子は子どもを産み、眞人は兄となり、一家が東京に戻る場面で物語は終わる
宮崎駿監督が様々な要素を詰め込んだ作品となっているため、正直要約するのが難しい作品です。
この超概要で理解できる方はいないのではないでしょうか(笑)
以下では、『君たちはどう生きるか』のあらすじをさらに詳細に、長めに解説しますので、参考になれば嬉しいです。
【ネタバレあり解説】『君たちはどう生きるか』のストーリー
ここからは映画の流れに沿って、『君たちはどう生きるか』のあらすじを解説します。
多くのシーンをカットしながらにはなりますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
奇妙なアオサギと不思議な塔
『君たちはどう生きるか』の舞台は太平洋戦争中の1940年頃の日本です。
宮崎駿監督が1941年生まれなので、ほぼ宮崎駿監督の幼少期と重なる時代です。
主人公は裕福な家庭に生まれた眞人(まひと)。
父親は飛行機部品工場の経営者で、おそらく戦争でかなり儲かっています。
宮崎駿監督の父親も「宮崎航空機製作所」の社長でした。
宮崎駿監督自身も裕福な暮らしをしており、この主人公はまさに宮崎駿監督自身であると言えます。
そんな眞人は火事で母・ヒサコを亡くし、父親と父親の再婚者・夏子とともに田舎のお屋敷に引っ越すことになります。
広大な敷地のお屋敷で、敷地内の森には入口がふさがれた不気味な塔が立ち、奇妙なアオサギが飛び回っていました。
屋敷で働くおばあさんによると、この塔は大叔父が建てたもので、奇妙な神隠し騒ぎが起こると言います。
この塔には近づかないように忠告された眞人は、興味を持ちつつもその場を離れるのでした。
屋敷で生活する眞人は母を亡くしたショックから立ち直れず、夏子にも心を開けないまま過ごします。
地元の学校に転校しますが、学校になじむこともできず、イジメにあう描写も描かれました。
そんな眞人はある日、自らの頭を石で傷つけ、血まみれの姿で帰宅します。
この頭の傷はのちに「悪意」のしるしとして語られます。
まっすぐな主人公が多い歴代ジブリ作品と比べても、眞人は「悪意」を秘めた貴重なキャラクターです。
眞人は両親やばあや達に心配され、丁寧に看病されます。
眞人の父は怒り狂い、学校に怒鳴りこみます。
そんな中、奇妙なアオサギが眞人に声をかけてきます「母があなたを待っている。死んでなんかいませんぜ」
母を語る不気味なアオサギに怒りを覚えた眞人は、弓矢を自作しアオサギ退治を試みます。
アオサギを探し回る中、眞人は塔の立つ森に向かう夏子の姿を目撃するのでした。
母の残した小説と夏子の失踪
アオサギを退治できないまま自室に戻った眞人は、ふと1冊の本を発見します。
「眞人へ」と書かれたその本は、母・ヒサコが残した吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』でした。
『君たちはどう生きるか』を夢中で読み進める眞人は、涙を流します。
- 貧富の格差で周囲と馴染めない
- 自分自身がイジメにあっている
- 母を亡くしたショックから、夏子ともコミュニケーションが取れない
こういった眞人自身の境遇に、『君たちはどう生きるか』がグサリと刺さったのでしょう。
この場面以降、眞人の態度・行動が変わっていくのです。
『君たちはどう生きるか』を読んでいる中、眞人は外が騒がしいことに気が付きます。
夏子が行方不明になったというのです。
異世界へ・キリコとの出会い
夏子が森に入る姿を目撃していた眞人は、屋敷で働くおばあさん・キリコと共にその後を追います。
そして例の不気味な塔にたどり着くのです。
キリコからは引き返そうと何度も説得されますが、眞人は塔の内部へと侵入していきます。
塔の内部にはアオサギが待っており、そこには死んだはずの母・ヒサコが眠っていました。
それはアオサギが作り出した偽物のヒサコであり、怒った眞人はアオサギのくちばしを弓矢で射貫きます。
するとアオサギは、半鳥人のおじさん・サギ男の姿を現すのです。
サギ男はポスタービジュアルにもなっている重要キャラクターです。
ポスターではクールな印象でしたが、その中身は禿頭のオジサンでした(笑)
この様子を見ていた塔の最上階にいる謎の人物は、サギ男に「下の世界へ案内するよう」に命じます。
そしてサギ男と眞人、老婆のキリコは床下に沈んでいくのでした。
目を覚ました眞人は、不思議な異世界にいることに気が付きます。
ペリカンの大群に襲われてしまった眞人ですが、通りすがりの女漁師・キリコに助けられるのです。
一緒に床下に沈んだはずの屋敷で働くおばあさん・キリコの姿は消えています。
その代わりにこの異世界で暮らす女漁師のキリコが姿を現します。
物語の終盤ではっきりすることですが、この二人のキリコは同一人物です。
若かりし頃に神隠しにあったキリコが、女漁師として暮らしているのです。(異世界に同じ人物は存在できないため、老婆のキリコは姿を消してしまったのでしょう)
眞人はキリコの仕事を手伝うことになり、その中で異世界の仕組みを学びます。
- この異世界は「あの世」や「地獄」と呼ばれる世界に近いということ
- ここにいる人は死んでいる人の方が多いということ
- 新たに人間の赤ちゃんとして生まれる「ワラワラ」という不思議な生物の存在
などなど、少しずつ異世界の情報が明らかになっていきます。
キリコと過ごしていた眞人の前に、再びサギ男が姿を現します。
「夏子の居場所を知っている」というサギ男の発言を聞いたキリコは、眞人とサギ男の仲直りを促します。
そして眞人とサギ男はキリコの元を離れ、夏子の居場所を目指すのです。
二人の母とインコの王国
サギ男の案内でたどり着いた小屋は、凶暴なインコ達に占拠されていました。
サギ男がおとりになってインコを引き付けている間に、眞人は小屋の中を探ります。
しかし眞人はインコに取り囲まれてしまい、そこを謎の少女・ヒミに救出されます。
眞人の母・ヒサコも生前、1年ほど神隠しにあっていたことが劇中で明かされました。
つまり謎の少女・ヒミの正体は、かつて神隠しにあっていた母・ヒサコなのです。
ヒミは眞人を自宅に案内し、夏子捜索にも協力してくれます。
ヒミと眞人の会話の中で、さらに異世界の謎が少しずつ明らかになっていきます。
- 不思議な塔はどの世界にも存在していて、各世界は繋がっていること
- 眞人の現実世界に繋がる扉が存在し、いつでも現世に帰れること
それでも眞人は現世には戻らず、夏子捜索を継続します。
インコから追われながらも、眞人とヒミは無事、夏子のいる産屋にたどり着きます。
元の世界に帰るように訴える眞人ですが、夏子は「お前が嫌いだ」と拒絶します。
「夏子母さん!」とはじめて眞人が夏子を「母さん」と呼びますが、その叫びも虚しく、眞人は産屋を追い出されて気絶してしまいます。
そして眞人とヒミは、インコ達に捕まってしまうのでした。
異世界の秘密と後継者
気絶していた眞人は、夢の中で大叔父と出会います。
かつて神隠しにあった大叔父は、この異世界の主として異世界のバランスを保っていました。
そしてこの役割を、子孫である眞人に継いでほしいと言うのです。
目を覚ました眞人は、インコに捕らわれており、調理される直前の状況でした。
このギリギリの状況を、インコに変装したサギ男が救出してくれます。
- 産屋に入ることはタブーであり、眞人はタブーを犯した
- タブーを犯した眞人を案内したヒミも同様の罪に問われる
- 罪に問われるヒミは、インコに捕らえられている
- この世界には神に等しい存在がいる
- インコの王は捕らえたヒミを交換材料に、何かを神と交渉しようとしている
こういった情報をサギ男から聞いた眞人は、インコの王の後を追います。
塔の頂上にたどり着いた眞人は、大叔父と対面します。
夢で見た話と同様、「世界のバランスを保つ仕事を継いでほしい」と頼まれるのです。
異世界の崩壊・現世へ
- 塔は複数の世界に存在し、それらは繋がっている
- 13個の穢れのない石を積み上げ、世界のバランスを取る必要がある
- 自らの血をひく悪意のない人間にしか、この仕事はできない
と大叔父は眞人に語り掛けます。
しかしこれを眞人は真っ向から拒否します。
頭の傷を見せて、自分は悪意を持った人間だと語るのです。
異世界にとどまるよりも、悪意を受け入れながら現世に戻り、キリコやヒミ、サギ男のような友達を作りたいと語りました。
物語の序盤で、眞人が自分で傷をつけた頭の傷です。この傷は眞人の悪意の象徴でした。
この様子を見ていたのがインコの王です。
「積み木で世界のバランスを保つ」というバカげた話に怒り、積み木をでたらめに積み上げ、積み木は崩れてしまいました。
その瞬間、異世界は崩壊しはじめます。
眞人たちは何とか現世に脱出し、ヒミやキリコもヒサコの少女時代へと戻っていくのでした。
現世に戻ったあと、サギ男はアオサギの姿に戻り、「じきに忘れる」「あばよ、友達」というセリフとともに去っていきます。
それから2年度、戦争は終わり夏子は子どもを産んでいます。
弟ができた眞人は家族で平和に暮らしており、東京に戻る場面で物語は幕を閉じます。
『君たちはどう生きるか』の謎を考察
『君たちはどう生きるか』は、多くの謎が説明されないままストーリーが進んでいきます。
セリフで語られる情報が少ないため、疑問を感じるシーンも多々あるでしょう。
ここでは、特に疑問の声が多く出そうな以下の3つの謎について考察します。
- 異世界の正体・13個の石の意味
- 夏子が行方不明になった理由
- 「君たちはどう生きるか」の意味
宮崎駿監督が明確に答えを語ったわけではなく、あくまでも考察にすぎませんが、参考になれば嬉しいです。
異世界の正体・13個の石の意味
『君たちはどう生きるか』で気になるのは、やはり異世界(下の世界)が何なのかということでしょう。
キリコの説明によると、「あの世」や「地獄」と解釈できます。
また、不思議な生き物・わらわらがこれから生まれていく存在ということで、必ずしも「死後の世界」というわけではありません。
この異世界は何を象徴しているのでしょうか。
キーワードとなるのが、「13個の石」です。
大叔父は13個の石を積み上げることで、異世界のバランスを保っていました。
これを、13の監督作品を積み上げて、スタジオジブリを維持してきた宮崎駿監督に置き換えてみるとどうでしょうか。
宮崎駿監督の劇場版監督作品
- ルパン三世 カリオストロの城(1979年)
- 風の谷のナウシカ(1984年)
- 天空の城ラピュタ(1986年)
- となりのトトロ(1988年)
- 魔女の宅急便(1989年)
- 紅の豚(1992年)
- On Your Mark(1995年)※耳をすませば同時上映
- もののけ姫(1997年)
- 千と千尋の神隠し(2001年)
- ハウルの動く城(2004年)
- 崖の上のポニョ(2008年)
- 風立ちぬ(2013年)
- 君たちはどう生きるか(2023年)
異世界はスタジオジブリを象徴したものと考えられないでしょうか。
大叔父は宮崎駿であり、作品を積み重ねたジブリを後継(宮崎吾朗)に託したいのだと解釈できます。
ただ一方で、そう簡単にスタジオジブリを維持することはできず、崩壊してしまうというストーリーです。
ここまではSNSや多くのサイトで噂されている考察でもあります。
ただ個人的には、宮崎駿がジブリを後に託したい等と言うだろうか・・?と疑問にも感じました。
「13個の石=宮崎駿監督作品」という考察は同意ですが、私は以下のように考えました。
- 大叔父
→世間がイメージする名監督・宮崎駿の象徴(クリーンなイメージ) - 13個の穢れのない石
→世間がイメージ・期待する宮崎駿監督作品(クリーンな作品) - 眞人
→悪意も抱えながら生きている本当の宮崎駿(ダークな一面)
クリーンな作品を積み上げてきた、世間の期待する宮崎駿像を拒否して、あらたな宮崎駿を歩みだすというわけです。
宮崎駿監督自身、本当は悪意を抱えながら作品と向かい合ってきたことの告白とも解釈できます。
実は『君たちはどう生きるか』では、宮崎駿監督の埼の字が「﨑」に変わっています。
この変化も、過去の宮崎駿のイメージを覆して、新たに宮「﨑」駿として歩みだすという決意の表れかもしれません。
このように考えると、今後も宮「﨑」駿として、新しい作品を生み出してほしいと期待してしまいますね(笑)
大叔父のモデルは高畑勲であることがインタビュー等で明かされています。
『君たちはどう生きるか』の中でも最も不思議な異世界の謎について、以下の記事で考察しています。
異世界の正体について ①地獄説 ②スタジオジブリ説 ③理想郷説 ④鳥かご説 の4つの視点で考察していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
夏子が行方不明になった理由
夏子は眞人の父の再婚相手であり、叔母(眞人の母・ヒサコの妹)でもあります。
眞人にとっては叔母が母になったわけです。
この夏子が行方不明になることで物語は大きく動き出しますが、なぜ夏子は森に向かったのでしょうか。
この理由を考えるうえで、夏子が異世界で入っていた「産屋」について理解することが重要です。
産屋とは・・?
産婦が人から離れて暮らす場所。出産準備の場所。
古く(特に戦前まで)は出血を伴う出産は「けがれ」と考えられており、出産を忌み産婦を隔離していた。
夏子は出産が近づいており、「産屋」にこもるために森に向かったと考えられます。
特に夏子は息子の眞人との関係が上手く築けておらず、自分自身を「けがれ」と感じていたのでしょう。
夏子と眞人は一見、穏やかにコミュニケーションを取っているように描かれていました。
ただ、それはあくまでも表面的なやりとりであり、親子の会話と呼べるものではありませんでした。
眞人との関係に悩む中、眞人は血を流して帰宅します。夏子は自分のことを責めてしまったのかもしれません。
眞人は異世界で産屋の夏子と再会しますが、「お前が嫌いだ」と夏子から拒絶されてしまいます。
眞人は必死で「お母さん!」と呼びかけるのですが、ここから物語は大叔父とのエピソードに展開していきます。
一見すると、本来の目的だった「夏子捜索」が忘れ去られたような展開でしたよね。
眞人と夏子の物語は、産屋で本音でぶつかり合ったことで解決していたのです。
親子の壁は解消し、物語のラストでは弟とともに平和に暮らす様子が描かれました。
「君たちはどう生きるか」の意味
物語のタイトルにもなっている「君たちはどう生きるか」
結局のところ、映画においてどのような意味を持っているのでしょうか。
眞人は物語の中盤で、母・ヒサコが残した小説『君たちはどう生きるか』を発見します。
眞人は読み進めるうちに涙を流しますが、この前後で眞人の態度は実は大きく変化しています。
『君たちはどう生きるか』を読む前の眞人
- 母を亡くしたショックでふさぎ込んでいる
- 新たな母・夏子と向かい合っていない
- 地元の子ども達とも馴染むことができない
- 奇妙なアオサギに敵意を持ち、退治しようとする
『君たちはどう生きるか』を読んだ後の眞人
- 行方不明の夏子を探すため、必死で前に進む
- キリコやヒミ等、仲間を得ていく
- アオサギと和解し、協力する
- 大叔父に自分の悪意を告白し、本音を打ち明ける
つまり吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』が、異世界の眞人に大きな影響を与えているのです。
眞人のモデルが宮崎駿監督自身だと考えると、宮崎駿監督も『君たちはどう生きるか』の影響を受けて生きてきたのでしょう。
吉野源三郎の孫にあたる吉野太一郎さんの記事の中で、宮崎駿監督の以下のようなコメントが紹介されています。
僕らは葛藤の中で生きていくんだってこと、それをおおっぴらにしちゃおう。走るのも遅いし、人に言えない恥ずかしいことも内面にいっぱい抱えている、そういう主人公を作ってみようと思ったんです。身体を発揮して力いっぱい乗り越えていったとき、ようやくそういう問題を受け入れる自分ができあがるんじゃないか
「君たちはどう生きるか」宮崎駿監督が、新作映画について語っていたこと。そして吉野源三郎のこと より
内面に抱える問題を受け入れたうえで、「どう生きるか」を問う、『君たちはどう生きるか』はそんな作品に仕上がっています。
『君たちはどう生きるか』の登場人物/声優(キャスト)
『君たちはどう生きるか』には、特徴的で魅力的なキャラクターが多数存在します。
声優陣(キャスト)は公開当日まで明かされない状態でしたが、ジブリとも馴染み深い豪華キャストがずらりと並びます。
- 牧眞人(声優:山時聡真)
- アオサギ(声優:菅田将暉)
- ヒミ(声優:あいみょん)
- 夏子(声優:木村佳乃)
- キリコ(声優:柴咲コウ)
- 眞人の父(声優:木村拓哉)
などなど、登場人物については以下の記事でまとめてみました。
登場人物について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事も合わせてご覧ください。
『君たちはどう生きるか』の原作・元ネタ
『君たちはどう生きるか』は宮崎駿監督のオリジナルストーリーで、原作はありません。
オリジナルストーリーではあるものの、特に以下の作品の影響を受けていると言われています。
- 『君たちはどう生きるか』吉野源三郎
- 『失われたものたちの本』ジョン・コナリー
2017年には漫画版が発表されており、200万部を超える大ベストセラーとなっています。
映画タイトルはこの本から取られており、眞人がこの本を読む様子も描かれています。
物語後半の眞人の行動は、この本の影響を受けたものと言えるでしょう。
ストーリーは宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』と共通点が多いですよね。
『君たちはどう生きるか』は『失われたものたちの本』の影響を受けていることは間違いないでしょう。
鈴木敏夫プロデューサー編集の『スタジオジブリ物語』でも、以下のように明かされています。
宮さんが1冊の本をぼくに提示した。
「読んでみてください」
アイルランド人が書いた児童文学だった。(中略)
7月に入ったばかりのころだった。宮さんが企画書を書いた。
一つ目。「引退宣言」の撤回。
二つ目。この本には刺激を受けたけど原作にはしない。オリジナルで作る。そして、舞台は日本にする。
三つ目。全編、手描きでやる。
むろん、監督は宮さんだった。
スタジオジブリ物語より
このアイルランド人が書いた児童文学こそ、『失われたものたちの本』というわけです。
原作ではないとはっきり明言されているものの、重要な1冊であることは間違いないでしょう。
原作については以下の記事で詳細にまとめていますので、ぜひ合わせてご覧ください。
主題歌は米津玄師『地球儀』
「宣伝なし」の方針の『君たちはどう生きるか』は、主題歌も公開日まで秘密でした。
公開日に発表された主題歌は米津玄師さんの『地球儀』です。
主題歌のオファーは、映画公開の4年ほど前に遡ることを米津玄師さんがTwitterで明かしています。
「君たちはどう生きるか」の主題歌として「地球儀」という曲を作らせてもらいました。… pic.twitter.com/nquTOr3hKn
— 米津玄師 ハチ (@hachi_08) July 14, 2023
また、ジャケットには『君たちはどう生きるか』の原画レイアウトが使用されています。
これは眞人が『君たちはどう生きるか』を読んで涙するシーンの後ろ姿ですね。
地球儀が配信されました。今回のジャケットは映画「君たちはどう生きるか」のレイアウト原画から抜粋させて頂きました。よろしくお願いします。https://t.co/8Kp3Y5hUjM pic.twitter.com/9UkbsV7WWw
— 米津玄師 ハチ (@hachi_08) July 16, 2023
米津玄師さんといえば、以前からジブリ好きを公言していました。
鈴木敏夫プロデューサーのラジオ「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」に出演したこともあり、熱いジブリ愛を語っています。
外部リンク:鈴木敏夫のジブリ汗まみれ
こういった方が主題歌に抜擢されるのは、ジブリファンとしても嬉しいですね。
『君たちはどう生きるか』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『君たちはどう生きるか』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- スタジオジブリ絵コンテ全集23 君たちはどう生きるか(徳間書店)
- ジ・アート・オブ 君たちはどう生きるか(徳間書店)
- 君たちはどう生きるか 映画 ガイドブック(東宝)
- スタジオジブリ物語(集英社新書)
- SWITCH Vol.41 No.9 特集 ジブリをめぐる冒険(SWITCH PUBLISHING)
- 失われたものたちの本(創元推理文庫)
- スタジオジブリ絵コンテ全集23 君たちはどう生きるか
-
『君たちはどう生きるか』の設計図とも言える絵コンテです。
さりげない宮崎駿監督の補足書きが、考察の重要なヒントとなります。
ポチップ - ジ・アート・オブ 君たちはどう生きるか
-
イメージボードやアフレコ台本等、制作時の資料が多数掲載されています。
スタッフのインタビューも掲載されています。
ポチップ - 君たちはどう生きるか 映画 ガイドブック
-
キャストのインタビューが豊富に掲載されている貴重な資料です。
※定価(税込1,320円)で購入するならジブリ美術館オンラインショップがおすすめです。
ポチップ - スタジオジブリ物語(集英社新書)
-
鈴木敏夫プロデューサーがスタジオジブリ誕生から『君たちはどう生きるか』の制作までを振り返ります。
『君たちはどう生きるか』公開前に『君たちはどう生きるか』について触れられた貴重な1冊です。
ポチップ - SWITCH 9 SEP.2023 VOL.41 NO9(SWITCH PUBLISHING)
-
鈴木敏夫プロデューサーやキャスト、スタッフが『君たちはどう生きるか』を語っています。
公開された情報が少ない『君たちはどう生きるか』にとって貴重なインタビューが掲載されています。
ポチップ - 失われたものたちの本(創元推理文庫)
-
『君たちはどう生きるか』の原作ともいえるファンタジー小説です。
ストーリーの骨子に共通点が多く、『君たちはどう生きるか』を読み取るうえでも参考になります。
なお、明確には「原作にはしていない」と語られており、クレジットはされていません。
ポチップ
なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。