当記事では、『となりのトトロ』に登場するネコバスについて解説します。
映画の中でも、かなりの存在感を発揮している人気キャラクターですよね。
根拠のない都市伝説ではなく、公式本やジブリ関係者の発言をもとに解説します。参考になれば幸いです。

- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。
ネコバスの正体は化け猫

ネコバスの正体は化け猫です。
これは公式本(ロマンアルバム等)にもはっきりと明記されている事実です。
もののけ専用のバス。
化けネコが、松郷に走っている東電鉄のバスをまねて変身したもの。
ヘッドライトになっている黄色のギョロ目を輝かせ、12本の足で走り回っている。
ロマンアルバム となりのトトロ より
化け猫といえば妖怪ですので、恐ろしいイメージを持つ人も多いかもしれません。
ただ、ネコバスはそのような「恐ろしい妖怪」ではありません。
以下、宮崎駿監督がネコバスに込めた詳細設定について解説します。
ネコバスの詳細設定
ここからは、公式本や宮崎駿監督のインタビュー等で語られているネコバスの詳細設定や裏話を紹介します。
ただ映画を見ただけでは分からない詳細設定を知ることで、ネコバスの正体を深く理解できるはずです。
宮崎駿監督の「化け猫」へのこだわり
ネコバスは「化け猫」ではあるものの、人間を恐怖に陥れるような「怖いお化け」ではありません。
妖怪に怖いイメージがあるのは水木しげる(ゲゲゲの鬼太郎)のイメージが強いのではないでしょうか。
水木しげるの妖怪について、宮崎駿監督は以下のように語っています。
水木しげるの妖怪とかまで戻る気は全然ないし、ああいうお化けには親しみも感じないんです。むしろ、化け猫がバスに化けてたっていう方が昭和生まれの自分にとってはピンと来るんです。
ロマンアルバム となりのトトロ 宮崎駿監督インタビューより
つまりネコバスは、宮崎駿流の「化け猫」を表現したものなのです。
「妖怪=怖いもの」なんて単純なイメージではつまらないでしょ、という宮崎駿監督のメッセージが聞こえてきます。
ネコバスも昔はただの化け猫だったんでしょ。バスを見て、おもしろいと思ったんです。
ロマンアルバム となりのトトロ 宮崎駿監督インタビューより
ネコバスは決して人間を怖がらせるための生き物ではありません。
ただ単純にバスを面白いと思ったからバスに化けているのであり、だからこそサツキやメイを助けることにも抵抗はないのです。
映画で登場するネコバスの行先一覧

ネコバスといえば、その行先表示が特徴のひとつです。
「めい」や「七国山病院」と表示してサツキを安心させたシーンは覚えている方も多いのではないでしょうか。
目立ってはいませんが、ネコバスの行先は場面場面で以下のように切り替わっています。
- 塚森
- 長沢
- 三ツ塚
- 墓道
- 大社
- 牛沼
- めい
- 七国山病院
- す
このうち、牛沼だけが実在する地名です(埼玉県所沢市)。
墓道や大社のように死や神を連想させる行先もあるため、「ネコバスはあの世へのバス」という都市伝説が囁かれたこともありました(公式に否定されています)

最後には「す」に帰るという描写も遊び心があって素敵ですね。
サツキとメイを自宅に送り届けた後のネコバスの行き先表示板に、何が書いてあるかご存知ですか? 書いてあるのは…「す」。サツキとメイの大冒険を見届けたネコバスは、この後自分の巣に戻っていくんですねー
— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) November 4, 2016
😆❤️ #ネコバスの巣 #となりのトトロ #kinro pic.twitter.com/UHxErbyuYK
観客に配慮したネコバスの演出
ネコバスが行先を「めい」と表示する場面は、ハッピーエンドを予感させる名シーンです。
ここには宮崎駿監督の以下のような配慮がありました。
あのカタカタッとやった(ネコバスが行先に「めい」と表示した)のは、小さい子にとっては、「めい」と出した方が絶対安心するから、安心させてあげようっていう、演出ですね。気持ちよく終わらせるための。あそこで安心しないと、最後にメイが見つかった道のところで安心するのでは、終わるのが早すぎるんですよ。
ロマンアルバム となりのトトロ 宮崎駿監督インタビューより
『となりのトトロ』は高畑勲監督作品『火垂るの墓』と同時上映でした。
『火垂るの墓』では主人公の兄妹が亡くなってしまうストーリーなので、『となりのトトロ』にも不安を覚えた観客は一定数いたと予想できます。
このネコバスの優しい演出は観客を間違いなく安心させたはずです。
サツキの薪を吹き飛ばしたのはネコバス?
ネコバスが駆け抜けるシーンでは、突風が吹きます。
突風と言えば、物語序盤、嵐の夜にサツキが薪を吹き飛ばされるシーンが描かれています。
「ひょっとすると、あれも見えなかっただけでネコバスが走り去っていたのでは・・?」と考えた方は多いのではないでしょうか。
私もそう思っていたのですが、嵐の夜のシーンは複数の解釈ができます。
宮崎駿監督「僕は初詣には行ったことないけど、それはあの金きらきんの神社の中に神様がいるとはとても思えないからで、やっぱりどっか深山幽谷の中に、日本人の神様っているんじゃないのかなあ(笑)」
インタビュアー「そこでいつもグースカ寝てるわけですか(笑)」
宮崎駿監督「あるいは突風の中でのんきに舞っていたりとかね。台風のシーンなんかも、本当に入れたかったんですけどね」
インタビュアー「サツキが出会う夜の突風が来るシーンなんてのはありますけど」
宮崎駿監督「ああいいふうにしかできなかった。(以下略)」
ロマンアルバム となりのトトロ 宮崎駿監督インタビューより
このインタビューを見ると「嵐の夜に風の中ではトトロが舞っていた」とも考えられます。
実際にトトロがサツキとメイを乗せて空を飛ぶシーンでは、「私たち風になってる!」とい名セリフも生まれています。
サツキの薪を吹き飛ばしたのはネコバスなのか?トトロなのか?どちらでもないただの風なのか・・?
答えは明らかにはされていませんが、想像が楽しいワンシーンです。
(後日追記!)
元スタジオジブリ制作デスクの木原浩勝さんの著書「ふたりのトトロ」を読んでいた時に面白い記載が見つかりました。
サツキの腕から枯木(風呂の焚き付け用)が突風で大クスのさらに上まで飛ばされていくシーンがある。
これはまだ見えないネコバスがサツキの傍を通過したから起こった出来事だ。
(中略)
そこで絵コンテにタイムが入る際、☆印とともに「ネコバスがとおったのです」と追加記入された。
「ふたりのトトロ」木原浩勝(講談社)より引用
これを見ると、サツキにぶつかった突風はネコバスで決まりですね。
ネコバスには様々な形態の仲間が存在する
ネコバスは化け猫ですので、他にも仲間の化け猫は存在します。
もちろん、皆が皆、バスに化けているわけではありません。
ネコバスの仲間については、三鷹の森ジブリ美術館で上映される短編アニメーション『めいとこねこバス』の中で描かれています。

『めいとこねこバス』では、以下のようなネコバスの仲間が登場します。(なかなかシュールで面白いです(笑))
- こねこバス
→めいの一人乗り - ネコ列車
→細長くて特大 - 豪華客船のようなネコバアちゃん
→特大。ネコバス達の長老?
こちらは思わず購入してしまったネコ列車のぬいぐるみです。

トトロの続編にも位置付けられる名作短編アニメーションですので、気になる方はぜひジブリ美術館をチェックしてみてくださいね。

『となりのトトロ』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『となりのトトロ』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- ジブリの教科書3 となりのトトロ(文春ジブリ文庫)
- ロマンアルバム となりのトトロ(徳間書店)
- スタジオジブリ絵コンテ全集 となりのトトロ(徳間書店)
- ふたりのトトロ(講談社)
- ジブリの教科書3 となりのトトロ(文春ジブリ文庫)
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過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。
- ロマンアルバム となりのトトロ(徳間書店)
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インタビューや設定情報が記載された公式のムック本です。
- スタジオジブリ絵コンテ全集 となりのトトロ(徳間書店)
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『となりのトトロ』の制作に使用された絵コンテです。
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- ふたりのトトロ(講談社)
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『となりのトトロ』で制作デスクを務めた木原浩勝さんの著書です。
デスク目線でのエピソードが掲載されている貴重な資料です。2018年出版と、比較的新しいのも特徴です。
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なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。