映画『紅の豚』は金曜ロードショーでも何度も放送されている名作です。
ただ、その原作は知らない方も多いのではないでしょうか。
実は原作は『飛行艇時代』と題された宮崎駿の短編漫画なのです。
当記事ではこの『飛行艇時代』について紹介します。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は映画「紅の豚」を一度は見ている方向けに執筆しています。
結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。
紅の豚の原作『飛行艇時代』について
紅の豚の原作は宮崎駿の短編漫画『飛行艇時代』です。
まずはこの『飛行艇時代』について紹介します。
『飛行艇時代』は宮崎駿の短編漫画
『飛行艇時代』の基本的な情報は以下のとおりです。
タイトル | 飛行艇時代 |
作者 | 宮崎駿 |
掲載雑誌 | 月刊モデルグラフィックス 1990年3月号〜5月号 |
構成 | 5ページ×3話(全15ページ) オールカラー |
全15ページと短い漫画ですが、コマ割りは細かく、セリフも多いため読みごたえはあります。
月刊モデルグラフィックス(模型雑誌)で宮崎駿監督は1984年11月号から1992年12月号まで連載を持っていました。
「雑想ノート」として連載していたもので、その連載の一部が『紅の豚』の原作となった『飛行艇時代』なのです。
何と変な物があるんだろう!とか、何と不思議なんだろう!っていうような妄想のカタマリを、まァ「妄想ノート」っていうんじゃつまらないから、色々な雑学の集まりとして描きたくなって描いたのが、「雑想ノート」というわけなんです。
『宮崎駿の雑想ノート』序文より引用
『飛行艇時代』のあらすじ
『飛行艇時代』は3話で構成されており、それぞれのあらすじは以下のとおりです。
登場人物や細かい設定は異なるものの、大きな流れは映画と同じです。
※各話のタイトルはありませんので、当サイトで勝手につけてます
- 第1話 VSマンマユート団
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空賊のマンマユート団から奪われた金貨と人質の美少女を救出するストーリーです。
空賊狩りの賞金稼ぎの豚が、真っ赤な飛行艇を乗り回して活躍します。
映画『紅の豚』の冒頭のシーンそのものです。(映画ではスイミングスクールの子どもたちが人質でしたが)
- 第2話 カーチスに敗北・フィオとの出会い
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愛艇フォルゴーレ号(本名:サボイアS-21試作機艇)のメンテナンスに向かうポルコは、隙をつかれてカーチスに撃墜されてしまいます。
ピッコロ社に飛行艇の修理を依頼する中、ピッコロ社の娘フィオに出会います。
フィオの働きぶりを見たポルコは、必ずやカーチスにリベンジすると心に誓います。
- 第3話 カーチスとの決闘
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愛艇フォルゴーレ号の修理が終わり、ポルコはフィオと共に隠れ家に戻ります。
待ち伏せしていたマンマユート団に襲われるものの、フィオの活躍でポルコとカーチスが1対1の決闘を行うことになります。
激闘の末、見事にポルコはカーチスを破り、リベンジを果たします。
映画『紅の豚』を見た方はお気づきだと思いますが、あらすじだけ見ると映画そのものですね。
連載のページ制約もあってか、非常にテンポよく物語は進行します。(たとえば、ポルコとカーチスの決闘は1ページで終わってしまいます)
この原作をもとにあの奥深い映画になったと考えると、グッとくるものがありますね。
『飛行艇時代』は今でも読むことができる
『紅の豚』の原作『飛行艇時代』を実際に読んでみたい!
という方も多いのではないでしょうか。
「雑想ノート」として連載していた作品が『宮崎駿の雑想ノート』として書籍化されていますので、こちらを購入しましょう。
大判サイズの書籍で、読みごたえがありますよ(以下は文庫本との比較)
初版は1997年と古い書籍ですが、今でも増刷されており、ネット上でも新品の購入が可能です。
『飛行艇時代』だけでなく、その他の連載作品も掲載されており、宮崎駿ワールドを堪能できます。
『紅の豚』と『飛行艇時代』の違い
『紅の豚』と『飛行艇時代』の大枠のストーリーは似ているものの、細かい設定や登場人物には違いがあります。
映画で初めて登場するシーン・人物も多いのです。
以下は『紅の豚』と『飛行艇時代』の目立った違いです。
- ホテルアドリアーノが出てこない
- ジーナが登場しない
- ポルコが魔法にかけられている設定が無い
- ポルコが人間に戻るシーンが無い
- ポルコの人間時代の回想が無い
- フェラーリン少佐が登場しない
- ファシストから追われるシーンが無い
等々
ジーナが登場しないため、「飛ばない豚はただの豚だ」の名言もなければ、「ジーナの賭け」もありません。
『紅の豚』は謎めいたシーンが多く様々な考察がされていますが、その謎めいたシーンの多くは映画製作で追加されたものなのです。
【裏話】『紅の豚』は15分の短編アニメの予定だった
実は『紅の豚』は当初は15分程度の短編アニメとして企画され、日本航空の協力のもと、機内上映される予定でした。
15分のストーリーは原作の第1話にあたるマンマユート団から人質を救うストーリーです。
ジーナはおろか、フィオすら登場する予定はなかったのですね。
(編注:絵コンテの)最後のページに来ると、豚がマンマユート団から子供たちを救うところで終わっています。つまり、最終的な完成版の冒頭部分だけだったんです。そこで思わず「え、これで終わりですか!?」って言っちゃったんですよ。
ジブリの教科書7紅の豚(文春ジブリ文庫)鈴木敏夫氏インタビューより引用
制作が進む中でストーリーは大きくなっていき、結果的に長編映画になったわけです。
- ポルコが豚である理由に関する設定の追加
→ジーナの登場、人間時代の回想の追加など - 製作期間に湾岸戦争が勃発したことで、作品の方向性が変化した
→ファシストやフェラーリン少佐のシーンが追加された?
コンテに入ってしばらくして、宮さんといろんなことを話し合う機会を持ったんです。その時にわかったのは彼がつくりたいものが当初言っていた能天気な航空活劇とはちがうものになってきているということだったんです。いちばん大きかったのが、その年のはじめに勃発した湾岸戦争の影響です。そんな状況下でこんな能天気な作品を作っていていいのだろうかという疑問ですね。
ジブリの教科書7紅の豚(文春ジブリ文庫)鈴木敏夫氏インタビューより引用
たしかに原作『飛行艇時代』を読むと、その印象は「能天気な航空活劇」でした。
ただ、映画『紅の豚』ではどこか陰のある、深みのあるストーリーになっていますよね。
15分の「能天気な航空活劇」は、時代背景や様々な設定を繰り返して『紅の豚』へと至ったのです。
『紅の豚』のまとめ記事はこちら!
『紅の豚』の都市伝説や考察のまとめなど、『紅の豚』の魅力を1記事にまとめています。ぜひ合わせてご覧ください。
『紅の豚』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『紅の豚』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- ジブリの教科書7 紅の豚(文春ジブリ文庫)
- 宮崎駿の雑想ノート(大日本絵画)
- スタジオジブリ絵コンテ全集7 紅の豚(徳間書店)
- ジブリの教科書7 紅の豚(文春ジブリ文庫)
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過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。
ポチップ - 宮崎駿の雑想ノート(大日本絵画)
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『紅の豚』の原作『飛行艇時代』が収録されています。
- スタジオジブリ絵コンテ全集7 紅の豚(徳間書店)
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『紅の豚』の制作に使用された絵コンテです。
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なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。