当記事では、映画『ハウルの動く城』の原作『魔法使いハウルと火の悪魔』について紹介します。
原作を知ることで、『ハウルの動く城』をより深く楽しむことができるようになります。
参考になれば嬉しいです。
以下の記事では『ハウルの動く城』のストーリーを徹底解説しています。
なかなかボリュームの多い記事ですが、ハウル好きに読んでもらえると嬉しいです。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。
原作『魔法使いハウルと火の悪魔』の概要
『ハウルの動く城』の原作はハウルの動く城シリーズの第1巻『魔法使いハウルと火の悪魔』です。
まずはこの原作の基本情報やあらすじ、登場人物を紹介します。
基本情報
『魔法使いハウルと火の悪魔』はイギリスのファンタジー小説です。
タイトル | 魔法使いハウルと火の悪魔 |
分類 | ファンタジー小説 |
出版年 | 1986年 ※日本語訳は1997年 |
作者 | ダイアナ・ウィン・ジョーンズ |
関連作品 (続編) | 『アブダラと空飛ぶ絨毯』 『チャーメインと魔法の家』 |
主な特徴 | 子ども向けに描かれたファンタジー小説 映画とは似ているようで異なる描写が多い |
続編とも呼べる『アブダラと空飛ぶ絨毯』では、主人公は変わりますがハウルやソフィーも登場します。
続編ではハウルとソフィーが結婚しており、母になったソフィーも描かれますので、3冊すべて読み切るのがおすすめです。
あらすじ
『魔法使いハウルと火の悪魔』の超簡単なあらすじは以下のとおりです。
- 舞台は魔法が存在する国「インガリー王国」
- 帽子屋の三姉妹の長女・ソフィーが主人公
- ソフィーは帽子屋を訪れた荒地の魔女により、90歳の老婆に変えられてしまう
- 街を飛び出したソフィーは強力な魔法使いハウルの動く城に転がりこむ
- 動く城に住む火の悪魔・カルシファーは、カルシファーとハウルの契約の秘密を解き明かせばソフィーの呪いを解くと取引を持ち掛ける
- ソフィーはハウルの城で暮らす中、様々なトラブルを抱えながらも次第にハウルとの絆を深めていく
- 荒地の魔女にその心臓を狙われているハウル。魔女の手を逃れ、ハウルやソフィー達に平穏は訪れるのか・・?
これだけを読むと、根本の設定やストーリーは原作通りに映画がつくられていると感じられます。
一方で、細かいキャラクター設定や詳細ストーリーは大きく異なっています。
以下、原作の登場人物を見ながら映画と原作の違いを感じ取っていただければと思います。
登場人物
ここからは、原作『魔法使いハウルと火の悪魔』の主な登場人物を紹介します。
※以下の記事では映画の登場人物を紹介していますので、ぜひセットでご覧ください。
- ソフィー・ハッタ―
-
帽子屋の長女で自信のないネガティブな主人公。
荒地の魔女の呪いで老婆となり、ハウルの城に転がり込むことになる。
無意識に言霊の魔法を使っていた魔法使いであった。
- レティ―・ハッタ―
-
帽子屋の次女でソフィーの妹。町一番の美女と言われる容姿を持つ。
カフェ「チェザーリ」で働くはずであったが、妹のマーサと入れ替わり、街を出て魔法の修行に励んでいる。
- マーサ・ハッタ―
-
帽子屋の末っ子(三女)でソフィーの妹。母からは才能の発揮を期待されていた。
街を出て魔法の修行に出るはずであったが、レティ―と入れ替わりカフェ「チェザーリ」で働いている。
※映画では修行中の妹の存在は描かれていない。
- ハウル(ハウエル・ジェンキンス)
-
動く城に住む強力な魔法使い。
わがままで浪費家、おまけに女たらしで浮気性である。
異世界(現代のイギリス・ウェールズ)の出身。
- マイケル・フィッシャー
-
動く城に住む15歳の青年でハウルの弟子。
マーサと恋に落ちる。
※映画では「マルクル」として幼い少年として描かれる
- カルシファー
-
ハウルと契約している火の悪魔。
正体は流れ星で、ハウルと契約したことで生き延びている。
契約の都合上、城の暖炉に縛り付けられており、ソフィーに契約を破るよう取引を持ち掛ける。
- サリマン(ベン・サリヴァン)
-
荒地の魔女を始末するよう命じられた王室付魔法使い。
魔女を始末することはできず、行方不明となった。
ハウルと同じく異世界の出身。
※映画に登場する「サリマン」とは全く異なる人物設定となっています。
- ジャスティン王子
-
行方不明となったサリマンの捜索に向かった王子。
サリマン同様、行方不明となった。
- ペンステモン夫人
-
ハウルとサリマンの魔法の師匠であり、威厳のある人物。
荒地の魔女に襲われ亡くなってしまう。
※映画に登場する「サリマン」はペンステモン夫人のイメージに近いです。
- パーシヴァル(犬人間)
-
荒地の魔女の呪いで犬の姿をした人間。
正体は行方不明となったサリマンとジャスティン王子が組み合わさった人物だった(荒地の魔女により、サリマンと王子はバラバラにされてしまっていた)
※映画に登場する犬(ヒン)との関連は不明です。
- ミーガン
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イギリス・ウェールズに住むハウルの姉。
- ガレス
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イギリス・ウェールズに住むミーガンの夫。
- ニール
-
イギリス・ウェールズに住むハウルの甥。
テレビゲームに熱中する様子などが描かれる。
- マリ
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イギリス・ウェールズに住むハウルの姪。
- アンゴリアン
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イギリス・ウェールズに住む学校の先生。
ニールの先生でもあり、ハウルも見とれる美女である。
ハウルの城への侵入を何度も試みるが、その正体は荒地の魔女と手を組む火の悪魔であった。
- かかし
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荒地に引っかかっていたところをソフィーに救われたカカシ
サリマンが荒地の魔女と戦うためにできる限りの魔法をかけて作ったゴーレム
※映画では「隣国の王子」でしたが、原作にその設定はありません
- 荒地の魔女
-
ソフィーを老婆に変えてしまった魔女。
サリマン、ジャスティン王子、ハウルのお気にいりのパーツを組み合わせ、理想の人間を作ることが狙い。
理想の人間を国王に据えて、自分自身は女王としてインガリー王国を統治することを企んでいた。
映画と原作では大きく異なっていることがご理解いただけたのではないでしょうか。
同じ名前でも設定が異なっていたり、映画には登場しないキャラクターも多く存在します。
『ハウルの動く城』の映画と原作の主な違い
ここからは映画『ハウルの動く城』と原作『魔法使いハウルと火の悪魔』の特に注目すべき違いを紹介します。
- 荒地の魔女は最後まで敵である
- 黒の扉は異世界(現代のウェールズ)に繋がっている
- 戦争はまだ起きていない
- ハウルの城は空中の城である
これらの違いについて以下、順番に解説します。
荒地の魔女は最後まで敵である
ソフィーを老婆に変えた荒地の魔女は、映画『ハウルの動く城』では終盤にはソフィーと共に暮らします。
力を失った魔女はまるで家族の一員のようにソフィーの仲間に加わるのです。
この荒地の魔女が仲間になる設定は、宮崎駿監督のオリジナル設定です。
原作では荒地の魔女は最後まで敵として登場します。
荒地の魔女や、荒地の魔女と手を組む火の悪魔を倒すことでハッピーエンドへ向かうストーリーなのです。
黒の扉は異世界(現代のウェールズ)に繋がっている
ハウルの動く城の見どころのひとつといえば、色に応じて行先が切り替わる扉です。
映画と原作では、「黒の扉」の行先が全く異なっているのです。
映画 | 黒の扉は戦地へ繋がっている |
原作 | 黒の扉はイギリス・ウェールズに繋がっている |
原作ではソフィーがイギリス・ウェールズを訪れ、テレビゲームや自動車に驚くというシーンが描かれています。
魔法の存在するインガリー王国とは全く別世界の、現代のウェールズというわけです。
これは映画では一切触れられなかった設定ですね。
戦争はまだ起きていない
映画『ハウルの動く城』では、戦争は物語の重要なキーワードとなっていました。
特に物語の後半は戦争との向き合い方が物語の主題となっています。
一方で、原作においては戦争シーンの描写はありません。
原作の王様のセリフによると、「宣戦布告しようとしてる情勢」ということなので、まさに戦争前夜という状況だったのでしょう。
ジャスティンは優れた将軍でな、敵国高地ノーランドおよびストランジアが今にも我が方に宣戦布告しようとしている情勢では、あれにいてほしいのだよ。
『魔法使いハウルと火の悪魔』より引用
宮崎駿監督は戦争に大きくスコープを当て、ストーリーも変えてしまったわけですが、原作者は好意的なコメントを寄せています。
戦争の存在を忘れないでいてくれたのは嬉しいわ。原作ではひそかに戦争の気配を感じさせる程度に抑えました。宮崎さんも私も、戦争のひどさを知る世代だと思う。ただ、それをどう表現するかで違うだけ。私は、どちらかというと、戦争を封印しているんです
『ジブリの教科書-ハウルの動く城』より引用
ハウルの城は「空中の城」である
宮崎駿監督の描いた「動く城」には足があり、面白い動きで歩きます。
これは宮崎駿監督のアイデアが存分に発揮されたデザインであり、原作のイメージは大きく異なっていました。
以下は原作『魔法使いハウルと火の悪魔』の背表紙に描かれたイラストです。
実際に原作の中には「空中の城」と表現するセリフもあり、本来想像していたのはこのような空飛ぶ城だったのでしょう。
足を生やして歩かせた宮崎駿監督は、さすがの想像力です・・
原作『魔法使いハウルと火の悪魔』で描かれた知られざる設定
最後に、原作でははっきりと明言されている知られざる設定を紹介します。
- ソフィーは「言霊の力」を使う魔法使い
- カルシファーの正体は流れ星
- ハウルの悪い噂は自ら流したデマ
- 移り気で女たらしなハウルの性格
- ハウルは異世界の出身である
映画でもよく見ればわかるように描かれているものもあります。
以下、順番に解説します。
ソフィーは「言霊の力」を使う魔法使い
物語の重要なカギを握る設定がこちら。
ソフィーは魔法使いであるという設定です。
ペンステモン夫人のセリフで、以下のように原作に記されています。
物に命を吹き込む力ですね。
ほら、その杖もあなたに話しかけられたおかげで、世間でいう魔法の杖になっていますもの。
『魔法使いハウルと火の悪魔』より引用
当初はソフィーは自覚していなかったものの、ストーリーを通じてソフィーは魔法使いであることを自覚します。
ソフィーの設定は以下の記事で詳細に解説しているため、ぜひ合わせてご覧ください。
カルシファーの正体は流れ星
映画『ハウルの動く城』でもそれらしい描写はありましたが、原作でははっきりとカルシファーの正体に言及します。
以下は、原作におけるソフィーのセリフです。
カルシファー。あんたって、もと流れ星だったんじゃない?
『魔法使いハウルと火の悪魔』より引用
流れ星として湿原に落下し、消え失せようとしていたところをハウルに発見されました。
消えてしまう流れ星をかわいそうに思ったハウルが、契約することでカルシファーの命を繋ぎとめたのです。
ハウルの悪い噂は自ら流したデマ
ソフィーの暮らす街では、ハウルは恐ろしい魔法使いとして有名でした。
「若く美しい女性を捕らえ、心臓を食ってしまう」と噂されており、この噂は映画でも採用されていました。
実はこの噂は自ら流したデマであることが明かされています。
ハウルさんに言われて、悪い噂を流しにいきましたから。ぼくが、そのう、そういった噂を流したんです。
『魔法使いハウルと火の悪魔』より引用
ハウルの恐ろしさを印象づけることが狙いだったようですね。
移り気で女たらしなハウルの性格
映画では「女たらし」という一面はクローズアップされていませんでしたが、原作ではハウルは常に女性を口説いて回っていました。
「ハウルは移り気なのさ」今度はカルシファーが言いました。
「女の子に興味を持ってるのは、相手が恋に落ちるまでだね。相手がハウルにほれたとたん、もうどうでもよくなるわけ」
『魔法使いハウルと火の悪魔』より引用
カルシファーとの契約で心臓を失っているハウルは、心の穴を埋めるために女性を口説いていたのでしょうか。
女性を口説くことを「ゲーム」と表現するハウルを、ソフィーは度々非難します。
ハウルは異世界の出身である
原作では、ハウルはイギリス・ウェールズの出身であることが明かされています。
物語の舞台は魔法の国・インガリー王国ですが、ハウルはその国の出身ではないのです。
ハウルが外国から来たのは知ってた。でも、あんたの話だと外国なんてもんじゃない、別世界みたいだね。
『魔法使いハウルと火の悪魔』より引用
映画ではウェールズの存在ごとカットされてしまった設定ですが、実はこの設定、イギリスのファンタジー小説のお約束だったりします。(主人公が現実世界の出身というのは、あるあるな設定なのです)
『ハウルの動く城』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『ハウルの動く城』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- ジブリの教科書13 ハウルの動く城(文春ジブリ文庫)
- ロマンアルバム ハウルの動く城(徳間書店)
- スタジオジブリ絵コンテ全集 ハウルの動く城(徳間書店)
- The art of HOWL’S MOVING CASTLE―ハウルの動く城(徳間書店)
- ジブリの教科書13 ハウルの動く城(文春ジブリ文庫)
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過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。
ポチップ - ロマンアルバム ハウルの動く城(徳間書店)
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インタビューや設定情報が記載された公式のムック本です。
ポチップ - スタジオジブリ絵コンテ全集 ハウルの動く城(徳間書店)
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『ハウルの動く城』の制作に使用された絵コンテです。
ポチップ - The art of HOWL’S MOVING CASTLE―ハウルの動く城(徳間書店)
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イメージボードやアフレコ台本等、制作時の資料が多数掲載されています。
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なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。