当記事では『ハウルの動く城』の一見悪役、荒地の魔女について解説します。
荒地の魔女は悪役として登場しますが、最後は家族の一員となる不思議なキャラクターです。
ジブリ公式本や原作、関係者インタビューをもとに、意外と知られていない裏話も紹介します。
『ハウルの動く城』の登場人物については以下の記事でまとめていますので、ぜひこちらも合わせてご覧ください。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は結末等のネタバレを含みますのでご注意くだ
荒地の魔女の特徴・基本設定
名前 | 荒地の魔女(本名不明) |
年齢 | 不明(50歳以上) |
一言プロフィール | 王宮を追放された強力な魔法使い |
声優 | 美輪明宏 |
荒地の魔女はヒロインのソフィーを老婆の姿に変えてしまった悪役です。
ただ物語の中盤では力を失い、かわいらしいおばあちゃんになってしまいます。
ここでは、以下の観点で荒地の魔女の主な特徴について紹介します。
- 悪魔と取引した強力な魔女
- おばあちゃんモードがかわいいと人気
- 声優は荒地の魔女のモデルでもある美輪明宏
順番にご覧ください。
悪魔と取引した強力な魔女
荒地の魔女は強力な魔法使いです。
その力の根源は悪魔の力であることがサリマンのセリフから理解できます(ハウルがカルシファーと取引をしたのと同じです)
サリマン「その人も昔はとても素晴らしい魔法使いでした。悪魔と取引をして永い間に身も心も喰いつくされてしまったのです」
なお、荒地の魔女はもともとはサリマンのような王室付魔法使いだったことが、ロマンアルバムの中で明かされています。
元は王室付魔法使いであったが、悪魔と契約したことでその座を追われ、荒地に追放されたことから、そう呼ばれるようになった。人々に名を知られ、恐れられている。
『ロマンアルバム ハウルの動く城』より引用
サリマンのいうように元々は「素晴らしい魔法使い」だったのでしょう。
悪魔と取引したことで力を得た代わりに、自分のためだけに魔法を使う邪悪な魔法使いに転落してしまったのです。
おばあちゃんモードがかわいいと人気
荒地の魔女はサリマンの陰謀により、王宮でその力を失ってしまいます。
無力なおばあちゃんとなって以降は、ソフィーの家族の一員として行動を共にするようになりました。
このおばあちゃんモードの荒地の魔女の無力で素直な様子は、「かわいい」と意外にも人気なようです(笑)
ただ、衰えてもやはり荒地の魔女、所々で鋭い動きを見せます。
- サリマンがハニー(ソフィーの母)を利用して忍ばせた「のぞき虫」を見破る
- ソフィーの「恋心」を見抜く
- ハウルの心臓を手に入れるため機敏な動きを見せる
無力に見えて実は優秀な一面を持つというギャップが、人気の秘密かもしれませんね。
声優は荒地の魔女のモデルでもある美輪明宏
荒地の魔女の声優は美輪明宏さんが担当しています。
『もののけ姫』でのモロに続いての起用です。
荒地の魔女については、美輪明宏さん自身がモデルになっているそうです。
以下、『ジブリの教科書』に掲載されている美輪さんのインタビュー内容です。
「荒地の魔女」は自分ではまだいい女だと思っているけど、ものすごいデブで、あごはたるみ放題の醜女。
「どうして私を選んだんですか?」ってそれは聞きたくなるでしょ。
そうしたら宮崎さん、「魔女のデッサンを描いてると、いくら描きなおしても美輪さんの顔になっちゃうんですよ。」って笑いながら平気で仰るんですよね。
「私、こんなに不細工?」ってまた二人で大笑いでしたね。
『ジブリの教科書 ハウルの動く城』より引用
美輪さんと宮崎駿監督の良い関係性も感じられるエピソードですね。
荒地の魔女に関する裏話
『ハウルの動く城』の映画を見ているだけでは分からない、荒地の魔女に関する裏話を紹介します。
ジブリ公式本の内容や関係者インタビューをもとに解説しますので、参考になれば嬉しいです。
原作では最後まで悪役
映画『ハウルの動く城』では荒地の魔女はソフィー達の家族の一員となりました。
一方で、原作『魔法使いハウルと火の悪魔』では荒地の魔女は最後まで悪役です。
原作の設定を解説!
荒地の魔女は火の悪魔と契約している悪い魔法使いでした。
ハウルの力を奪い、インガリー王国を支配することを狙っていたのです。
荒地の魔女・荒地の魔女と取引している火の悪魔を倒すことで、物語はハッピーエンドとなります。
純粋な悪役が存在しないというのがいかにもジブリらしい作りですが、これは宮崎駿監督のオリジナル設定なのです。
荒地の魔女とハウルはかつて恋人だった
荒地の魔女とハウルは、実はかつて恋人関係にありました。
映画ではハウルと荒地の魔女の過去については以下のセリフくらいしか情報はありません。
ハウル「面白そうな人だと思って僕から近づいたんだ・・それで逃げ出した。恐ろしい人だった・・」
ただ、『ハウルの動く城』にはハウルと荒地の魔女の過去を描いたサイドストーリーが存在するのです。
ジブリ美術館で上映されている短編映画『星をかった日』です。
鈴木敏夫プロデューサーが映画監督の押井守さんとの対談で以下のように発言しています。
あれ見た?星をかった日。美術館でやってるやつ。
サイドストーリーを珍しくやったのよ、宮さんが。ハウルの少年時代。それで一言で言うと、そこに若き日の荒れ地の魔女が登場。ハウルの童貞を奪った彼女が・・・いい話なんですよ。
対談の鈴木敏夫発言より
はっきりと「ハウルの少年時代」「若き日の荒れ地の魔女」と発言していますね。(童貞を奪ったなんて情報も・・!)
この対談は2012年にニコ生で「押井守ブロマガ開始記念! 世界の半分を怒らせる生放送」として配信されました。
2023年現在もニコ動やYouTubeに音源は残っていますので、気になる方はぜひ聞いてみてください(1時間半ほどの対談ですが、この発言は54分頃に登場します)
『星をかった日』の詳細は以下の記事でも解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
荒地の魔女に関する考察
最後に、映画では明らかになっていない以下の2点について考察します。
- 荒地の魔女がソフィーに呪いをかけた理由
- 荒地の魔女が王宮を訪れた理由
あくまでも当サイトの考察であり、公式な答えがあるわけではありません。
ぜひ、あなたなりの理由も考えてみてくださいね。
荒地の魔女がソフィーに呪いをかけた理由
『ハウルの動く城』は荒地の魔女がソフィーに呪いをかけることで物語が動き出します。
ただ、荒地の魔女はなぜソフィーを訪ね、呪いをかけたのでしょうか。
ヒントとなるのが、荒地の魔女の去り際のセリフ「ハウルによろしくね」です。
このセリフを踏まえると、荒地の魔女はソフィーをハウルの関係者とみなしています。
ソフィーは日中、ハウルと空中散歩を楽しんだわけですが、荒地の魔女はこれに嫉妬したのではないでしょうか。
荒地の魔女はハウルに対して執着する様子が描かれていますので、ハウルと親密に見えた女性を襲っても不思議ではないですよね。
荒地の魔女が王宮を訪れた理由
荒地の魔女は王宮でサリマンの策略にはまり、魔力を失ってしまいました。
そもそも、なぜ荒地の魔女はわざわざ王宮を訪ねたのでしょうか。
追放された立場の荒地の魔女をわざわざ呼ぶということは、罠かもしれないと考えなかったのでしょうか。
おそらくこの答えは、誇らしげに語っていた以下のセリフが全てです。
荒地の魔女「私は王様に呼ばれているの。サリマンのバカも、いよいよ私の力が必要になったみたいよ」
戦争という危機的状況の中、自分の力が求められていると本気で考えたのでしょう。
あわよくば王室付魔法使いの座に返り咲けるかもしれない、と考えていたのかもしれませんね。
強力な魔法使いでありながら、意外と素直な性格ですね(笑)
『ハウルの動く城』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『ハウルの動く城』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- ジブリの教科書13 ハウルの動く城(文春ジブリ文庫)
- ロマンアルバム ハウルの動く城(徳間書店)
- スタジオジブリ絵コンテ全集 ハウルの動く城(徳間書店)
- The art of HOWL’S MOVING CASTLE―ハウルの動く城(徳間書店)
- ジブリの教科書13 ハウルの動く城(文春ジブリ文庫)
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過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。
ポチップ - ロマンアルバム ハウルの動く城(徳間書店)
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インタビューや設定情報が記載された公式のムック本です。
ポチップ - スタジオジブリ絵コンテ全集 ハウルの動く城(徳間書店)
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『ハウルの動く城』の制作に使用された絵コンテです。
ポチップ - The art of HOWL’S MOVING CASTLE―ハウルの動く城(徳間書店)
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イメージボードやアフレコ台本等、制作時の資料が多数掲載されています。
ポチップ
なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。