『となりのトトロ』はサツキとメイの姉妹を主人公とした、心温まるほのぼのとしたストーリーです。
このトトロについて、怖い都市伝説が噂されたことがあるのをご存知でしょうか。
2000年代にネット掲示板等であまりにも噂が広まったため、ジブリが公式に否定する事態にまでなりました。
当記事では、「トトロ死神説」「サツキとメイの死亡説」など、恐怖の都市伝説を紹介します。
公式には否定されており、よく見ると矛盾も多いデマです。
とはいえ、一種の考察として楽しむことはできますので、参考になれば幸いです。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。
『となりのトトロ』の怖い都市伝説
『となりのトトロ』の都市伝説として噂されることが多いのは、主に以下のような内容です。
- トトロは死神である
- ネコバスは冥界に繋がる乗り物である
- メイは行方不明になったときに亡くなっている
- サツキはメイの元へ向かうため、自ら冥界への扉を開いた
- 『となりのトトロ』は「狭山事件」をモデルとしている
すべてをセットで考えて「トトロ死神説」「サツキとメイの死亡説」と考えても良いでしょう。
ジブリは否定しているデマとも言える説ですが、この都市伝説が広まった考察とともに以下、順番に紹介します。
トトロは死神である
都市伝説では、トトロの正体は死神であると噂されていました。
この都市伝説は主に以下のように考察されていました。
- トトロは死者を導く死神である
- トトロを見ることが出来るのは死者もしくは死期が近い者だけである
→サツキとメイは死亡または死期が近づいていた
この考察の根拠とされるのが、ジブリ美術館で上映される短編アニメーション『めいとこねこバス』です。
『めいとこねこバス』の中では、巨大なネコバス・ネコバアちゃんが「お化けトトロ」を乗せて「風浄土」に飛び立つシーンが描かれています。
これを『となりのトトロ』にも登場した大トトロが見送っているのです。
ここから、トトロは死者を導く死神なのだ、という説が生まれています。
ネコバスは冥界に繋がる乗り物である
トトロが死神であるなら、ネコバスは冥界(死者の国)に繋がる乗り物だ、というのが都市伝説の主張です。
これには以下のような根拠が挙げられています。
- ネコバスの行先に「墓道」「大社」等、死や神を連想させる言葉が登場する
- 短編アニメーション『めいとこねこバス』で死後の世界を連想させる「風浄土」に飛び立つネコバスが登場する
- ネコバスの姿は普通の人間には見えない(=死者だけに見える)
メイは行方不明になったときに亡くなっている
『となりのトトロ』の終盤、メイは行方不明になっていますが、ここで実は亡くなっているという都市伝説です。
この考察は以下のように説明されることが多いです。
- 池で見つかったものは実はメイのもので、メイは亡くなっている
- 物語の終盤からメイは影が描かれておらず、これは霊体であることを意味している
- メイが発見されるのが地蔵の傍なのは、メイの魂が救済を求めているから
メイは死期が近づいていたからこそ、トトロやネコバスに会えたのです。
そして、物語のラストではネコバスに乗って死後の世界へ旅立った、というのが都市伝説の考察です。
サツキはメイの元へ向かうため、自ら冥界への扉を開いた
メイが亡くなったことを悟り、サツキも死後の世界に向かったと考える考察です。
主に以下のように説明されています。
- 川に落ちたサンダルを見て、メイの死を悟った
- メイの死を悟ったサツキは、自らの死も覚悟してトトロへ助けを求めた
- ネコバスに乗ってサツキも死語の世界に行くことで、サツキはメイに会えた
- サツキとメイは亡くなっているため、病院の母には会わなかった(会えなかった)
妹のメイをひとりぼっちにしないため、サツキは自ら死を選んだというわけです。
『となりのトトロ』は「狭山事件」をモデルとしている
『となりのトトロ』は実際に1963年に起こった「狭山事件」がモデルになっていると考える説です。
狭山事件とは・・
- 1963年に埼玉県狭山市で起こった強盗強姦殺人事件
- 高校1年生の女子高生が誘拐され行方不明に
- 現金20万円を要求するなどの脅迫状が残された
『となりのトトロ』は埼玉県所沢市を舞台とした物語です。
狭山市とも隣接した土地であり、狭山事件の被害者には姉がいたことから、「狭山事件」がモデルだと噂されたのです。
トトロ死神説・メイ死亡説がデマと言える根拠
都市伝説をまとめると、狭山事件をモデルとした物語で、サツキとメイは死神であるトトロと出会ったというわけです。
ここまでの内容を読んでいただくと、それなりに真実味が感じられたのではないでしょうか。
だからこそ多くの人が信じ、広まったのです。
ストーリーを切り取って解釈するとそれっぽく感じられますが、実際には数多くの矛盾が存在します。
以下では、この都市伝説(トトロ死神説・サツキとメイ死亡説)がデマであると言える根拠を解説します。
エンディングと明らかに矛盾する
この都市伝説では、なぜか『となりのトトロ』のエンディングシーンが無かったことになっています。
エンディングでは、メイを探し回るおばあちゃんとメイが抱き合います。
メイが亡くなっているとすると、このシーンは説明がつきません。
その他、エンディングでは以下のようなイラストが描かれており、これも死亡説と矛盾します。
- タクシーで帰宅したお母さんにサツキとメイが駆け寄る
- お母さんとサツキとメイが一緒に笑顔で入浴
- 1つの布団に一緒に入り、お母さんがサツキとメイに読み聞かせ
- サツキとメイが他の子どもたちと遊んでいる場面
明らかにハッピーエンドで、どう考えても死亡説とは繋がりません。
テレビ放送ではエンディングがカットされることもあるため、この矛盾に気が付かなかった人もいるのかもしれませんね。
池で見つかったサンダルはメイのものではない
池で見つかったものはメイのサンダルだと考えるのが都市伝説ですが、そうではありません。
サツキが「メイのじゃない」と否定しているのでこれが全てとも言えますが、それだけではありません。
(これだけなら、すべてを悟ったサツキが周囲の人に嘘をついたとも考えられます)
もしもメイが池で亡くなっているのなら、亡くなった時点ではサンダルは脱げているはずです。
そうだとすると、描写の細かい宮崎駿監督なら、その後はメイのサンダルを脱がせると考えられます。
ただ、メイはその後もしっかりとサンダルを両足に履いています。
サツキの発言と、この描写を踏まえると、池のサンダルはメイのものではないと考えるのが自然でしょう。
サツキとメイの影が無いのは作画上の理由
サツキとメイの影が途中から描かれなくなっていることは、都市伝説の中でもカギを握っています。
これは事実ですが、ジブリはこれを「作画上で不要と判断して略しているだけ」と説明しています。
『となりのトトロ』では時間帯に応じて、影の角度や大きさまで、細かく計算されて描かれています。
だからこそ、「影が無い」という事実はこの都市伝説を真実っぽく感じさせました。
ただよくよく考えると、物語の終盤は日没の時間帯であり、影が省略されていても不思議ではありません。
公式も否定しているとおり、影が無いだけでサツキとメイが霊体であると考えるのは無理があるでしょう。
サツキとメイは当初1人の女の子だった
サツキとメイのモデルは、狭山事件の姉妹をモデルにしたというのが都市伝説の主張です。
ただ実は、そもそもサツキとメイは1人の女の子でした。
主人公は1人の女の子だったものが、紆余曲折を経て姉妹に途中で変更されたのです。
※このエピソードは以下の記事で詳細に解説しています。
狭山事件の姉妹をモデルにしているのなら、主人公も最初から姉妹だったはずです。
そもそも、狭山事件の被害者は四女であり、姉も兄もいます。
強引に結び付ければ共通点がある事件でも、実際は相違する点も多いのです。
『となりのトトロ』の企画書と矛盾する
都市伝説が真実だとすると、『となりのトトロ』はゾッとする怖い作品ということになります。
宮崎駿監督は本当にそのような意図をもって作品を作っているのでしょうか。
以下は、『となりのトトロ』の企画書に記載された企画意図です。
「となりのトトロ」の目指すものは、幸せな心暖まる映画です。楽しい、清々した心で家路をたどれる映画。恋人たちはいとおしさを募らせ、親たちはしみじみと子供時代を想い出し、子供たちはトトロに会いたくて、神社の裏の探検や樹のぼりを始める。そんな映画を作りたいのです。
出発点-宮崎駿-より引用
都市伝説とは方向性が真逆ですよね。
「死」や「過去の事件」について考えさせるといった意図は少なくとも読み取れません。
作品の企画意図を踏まえても、この都市伝説は矛盾していると言えるでしょう。
スタジオジブリも都市伝説を公式に否定
しっかり作品を見ると矛盾も多い都市伝説ですが、衝撃的なこの噂はかなりの勢いで広がりました。
実際にジブリへの問い合わせも多かったようで、2007年5月のジブリ日誌で、公式に以下の声明が出されています。
「トトロは死神なんですか?」という一般の方からの問い合わせばかり。みなさん、ご心配なく。トトロが死神だとか、メイちゃんは死んでるという事実や設定は、「となりのトトロ」には全くありませんよ。最近はやりの都市伝説のひとつです。誰かが、面白がって言い出したことが、あっという間にネットを通じて広がってしまったみたいなんです。「映画の最後の方でサツキとメイに影がない」のは、作画上で不要と判断して略しているだけなんです。みなさん、噂を信じないで欲しいです。 ...とこの場を借りて、広報部より正式に申し上げたいと思います。
ジブリ日誌(2007年5月)より引用
宮崎駿監督を筆頭に、スタジオジブリは「解釈は受け手の自由」とするのが基本スタンスです。
このように考察を否定するのは珍しいことですが、それだけ反響が大きく、そして作品の意図とずれていたのでしょう。
なお、『となりのトトロ』は公式にも数多くの設定や裏話が公開されています。
以下の記事でまとめていますので、ぜひこちらも合わせてご覧ください。
『となりのトトロ』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『となりのトトロ』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- ジブリの教科書3 となりのトトロ(文春ジブリ文庫)
- ロマンアルバム となりのトトロ(徳間書店)
- スタジオジブリ絵コンテ全集 となりのトトロ(徳間書店)
- ふたりのトトロ(講談社)
- ジブリの教科書3 となりのトトロ(文春ジブリ文庫)
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過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。
- ロマンアルバム となりのトトロ(徳間書店)
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インタビューや設定情報が記載された公式のムック本です。
- スタジオジブリ絵コンテ全集 となりのトトロ(徳間書店)
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『となりのトトロ』の制作に使用された絵コンテです。
ポチップ - ふたりのトトロ(講談社)
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『となりのトトロ』で制作デスクを務めた木原浩勝さんの著書です。
デスク目線でのエピソードが掲載されている貴重な資料です。2018年出版と、比較的新しいのも特徴です。
ポチップ
なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。