当記事では、『天空の城ラピュタ』に登場する悪役・ムスカについて解説します。
悪役とはいえ深みのあるキャラクターで、ファンの間では人気も高い人物です。
映画を見ているだけでは分からない裏話も紹介しますので、参考になれば嬉しいです。
以下の記事では『天空の城ラピュタ』のストーリーを徹底解説しています。
なかなかボリュームの多い記事ですが、ラピュタ好きに読んでもらえると嬉しいです。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。
『天空の城ラピュタ』の悪役!ムスカの基本情報
名前 | ムスカ (ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ) |
年齢 | 32歳 |
声優 | 寺田農 |
一言プロフィール | 軍の権力者 シータの持つ飛行石を狙う |
ムスカは『天空の城ラピュタ』における悪役で、シータの持つ飛行石を狙います。
まずは以下の観点で、ムスカについて紹介します。
- 政府から派遣された諜報員
- ラピュタを追い求める野心家
- ラピュタ人の末裔「ロミュスカ・パロ・ウル・ラピュタ」
- 声優・寺田農のエピソード
ぜひ順番にご覧ください。
政府から派遣された諜報員
ムスカは「大佐」の役職である一方で、政府から派遣された諜報員でもあります。
『天空の城ラピュタ』のモウロ将軍は地方の権力者ですが、ムスカは中央政府の役人なのです。
だからこそ、「大佐」という役職ながら「将軍」と対等ともいえるやりとりを見せます。
小説版『天空の城ラピュタ』によると、むしろ将軍は中央から派遣されたムスカに嫉妬しているようです。
要するにムスカはエリートというわけですね。
ただし、諜報員という仕事は、ムスカにとっては仮の姿でしかありません。
ラピュタ探索にとって、最も都合の良い役職だったのでしょう。
次第に高ぶるムスカにとって、ラピュタ探索のために仕方なく就いた<仮の姿>の特務機関の部下など、しょせん汚らわしいだけの存在だった。
小説 天空の城ラピュタ より引用
ラピュタ人の末裔「ロミュスカ・パロ・ウル・ラピュタ」
政府から派遣された諜報員というのはあくまでもムスカの表の顔です。
その正体はラピュタ人の末裔でした。
単なるラピュタ人ではなく、ヒロインのシータと同じくラピュタ人の王族の末裔です。
ムスカはラピュタ人の末裔として、「ロミュスカ・パロ・ウル・ラピュタ」という名を継承しています。
ラピュタ追い求める野心家
軍のエリートであり、ラピュタ人の末裔の末裔という裏の顔を持つムスカは、強力な野心家です。
「何が何でもラピュタを見つけてやる」と言わんばかりに、シータの持つ飛行石を狙います。
この野心、執着の裏側には、ムスカのコンプレックスが存在することが設定資料で明かされています。
野心を持って軍隊に入ったが、どこかにすごいコンプレックスを持っている男という設定です。
もともと高貴な一族だという自負と、しかし、現状は軍隊の中のほんの一部にすぎないというギャップですね。
そして、そういったものがいくつもあって、「いつか見ていろ」という内面がある。
The art of Laputa―天空の城ラピュタ より引用
声優・寺田農のエピソード
ムスカの声優は、寺田農(みのる)さんです。
映画やドラマ、舞台で活躍する名俳優ですが、アニメの仕事は数本しか受けていません。
中でも『天空の城ラピュタ』のムスカは、寺田さんにとって初めての声優の仕事でした。
「自分で作る役ではなくて、絵に合わせるのは難しい」とアフレコ現場でのインタビューで答えています。
ムスカに関する裏話
実はムスカは宮崎駿監督のお気に入りのキャラクターで、様々な細かい設定が存在します。
ここでは、映画を見ただけでは分からない、以下の裏話を紹介します。
- ムスカが「3分」待った理由
- ムスカが持っていた「古文書」の内容
- ムスカがシータを生かしていた理由
- 『天空の城ラピュタ』はムスカの栄光と挫折の物語?
- ムスカには宮崎駿監督自身を投影している?
ムスカが「3分」待った理由
物語のクライマックス、ムスカは銃口をパズーとシータに突き付けます。
一方でパズーは、ランチャーをムスカに向けながら、「シータと話がしたい」と訴えます。
緊迫したシーンですが、ここでのムスカのセリフが印象に残っている方は多いのではないでしょうか。
ムスカ「3分間待ってやる」
いやいや、バカじゃないのか!と思った方も多いでしょう。
この3分を与えてしまったために、パズーとシータは「バルス」を唱えることができたのです。
ただ実は、ここには面白い裏設定が存在します。
実はムスカは銃弾が切れており、補充する時間が欲しかったのです。
※↓絵コンテにはっきりと書かれています。
銃口を突き付けたムスカが追い詰めているように見えましたが、実はムスカも追い込まれていたのです。
このシーン、パズーも弾切れのランチャーをムスカに向けて構えていました。
ムスカ目線では弾切れかどうかは分かりませんので、銃弾が切れたムスカは大ピンチだったわけです。
実際はふたりとも弾切れの武器を向けあっていた、というのは何ともリアルで面白い裏設定です。
この3分の間にムスカは形成を整えるつもりでしたが、見事に「バルス」を食らって野望は潰えたわけですね。
決して親切心で与えた3分ではなかったのです。
ムスカが持っていた「古文書」の内容
ラピュタを探索するムスカは「古文書のとおりだ!」と発言します。
映画の中では古文書についてはほとんど説明されていませんが、ロマンアルバムの中で内容が明かされていました。
- ラピュタ人は天上に君臨し、栄華を誇った
- 最高の富を持ち、ぜいたくの限りをつくしていた
- 正体不明の疫病が流行し、王は地上に降りることを決意した
- 地上の悪意を恐れたラピュタ人は、最低限の財産だけを持って地上に降りた
- ゴンドアの谷等、目立たない地域でひっそりと暮らすようになった
ロマンアルバムの紹介部分ではこの通り、ラピュタ人が地上に降りた理由が語られていました。
その他にもムスカは、ラピュタ人の繁栄や科学力について、古文書を読み込んだのでしょう。
「いつかこのラピュタを取り戻す」そう決意したのではないでしょうか。
ムスカがシータを生かしていた理由
飛行石を手に入れたムスカは、ラピュタを自在にコントロールしていました。
本来であればシータは「用済み」のはずですが、ムスカは最後までシータを横につかせました。
この理由については、小説版で明らかになっています。
王国の復活には王女がいた方がふさわしいという理由だけで「小娘」を生かしておいたのに、あまりにしぶとい反抗に、もうウンザリしていた。
小説 天空の城ラピュタ より引用
要するに、あまり深い理由はないようです(笑)
同じラピュタ人の末裔として、ラピュタで共に暮らす相方に相応しいと思ったのでしょう(ムスカも一人はさみしかったのでしょうか・・笑)
『天空の城ラピュタ』はムスカの栄光と挫折の物語?
『天空の城ラピュタ』の主人公はパズーとシータです。
ただ、『天空の城ラピュタ』の初期構想を読んだ高畑勲監督と鈴木敏夫プロデューサーは、「これはムスカの栄光と挫折の物語だ」と評価したそうです。
『The art of Laputa―天空の城ラピュタ』はシナリオの準備稿が掲載されているので、私もこれを読んでみました。
「ムスカの物語」とまでは言わないですが、たしかにパズーの印象は薄いです。
例えば、準備稿では最後のバルスもシータがひとりで唱えてしまいます。
このストーリーの中では、たしかにムスカのキャラが濃く、目立っています。
これは宮崎駿監督の本意ではなく、少年・パズーを中心に添えた物語に軌道修正していったのでしょう。
ムスカには宮崎駿監督自身を投影している?
準備稿では「ムスカの栄光と挫折の物語」に見えてしまうほど、ムスカは作りこまれたキャラクターです。
単なる悪役ではなく、非常に魅力的な宮崎駿監督のお気に入りのキャラクターとなっています。
裏話を、鈴木敏夫プロデューサーがインタビューで語っていました。
宮崎駿はムスカが好きなんです。(中略)
ああいう人に思い入れがあって、自己投影しているんですね。
ジブリの教科書 天空の城ラピュタ より引用
ムスカは宮崎駿監督自身を投影していたのですね。
本人の発言ではなく、鈴木敏夫プロデューサーの想像に過ぎませんが、いつも傍で見ている鈴木さんの見解なら間違いないでしょう。
だからこそ、ムスカはこれほどまでに魅力的なキャラクターとなっているのですね。
関連記事の紹介
以下の記事では、『天空の城ラピュタ』の登場人物をまとめて紹介しています。
ぜひ、ほかのキャラクターについてもご覧ください。
『天空の城ラピュタ』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『天空の城ラピュタ』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ(文春ジブリ文庫)
- ロマンアルバム 天空の城ラピュタ(徳間書店)
- スタジオジブリ絵コンテ全集 天空の城ラピュタ(徳間書店)
- The art of Laputa―天空の城ラピュタ(徳間書店)
- もう一つの「バルス」 ―宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代― (講談社文庫)
- 小説 天空の城ラピュタ (アニメージュ文庫)
- ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ(文春ジブリ文庫)
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過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。
ポチップ - ロマンアルバム 天空の城ラピュタ(徳間書店)
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インタビューや設定情報が記載された公式のムック本です。
- スタジオジブリ絵コンテ全集 天空の城ラピュタ(徳間書店)
-
『天空の城ラピュタ』の制作に使用された絵コンテです。
ポチップ - The art of Laputa―天空の城ラピュタ(徳間書店)
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イメージボードやアフレコ台本等、制作時の資料が多数掲載されています。
ポチップ - もう一つの「バルス」 ―宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代― (講談社文庫)
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ラピュタ制作スタッフが明かす、裏エピソードが語られます。
ポチップ - 小説 天空の城ラピュタ (アニメージュ文庫)
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『天空の城ラピュタ』の小説版です。
映画では説明が省略された、様々な設定を知ることができます。
ポチップポチップ
なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。