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【紅の豚】名セリフ「飛ばない豚はただの豚だ」の意味を考える

紅の豚_名セリフ

紅の豚の名セリフと言えば「飛ばない豚はただの豚だ」を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。

(時々「飛ない豚はただの豚だ」と誤解している方もいますが・・)

直感的にも面白い名言ですが、考えれば考えるほど深みのあるセリフなのです。

当記事では名セリフ「飛ばない豚はただの豚だ」の意味について考察します。

筆者のプロフィール
  • スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
  • 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
  • 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
目次

名セリフ「飛ばない豚はただの豚だ」が生まれた場面

電話するポルコ
紅の豚-スタジオジブリ 場面写真より

まずは「飛ばない豚はただの豚だ」が生まれた場面についておさらいしておきましょう。

映画の中盤に差し掛かるあたり、ポルコがカーチスに飛行機を壊されてしまった後の場面です。

心配するジーナとポルコの電話の中でこのセリフが生まれました。

ジーナ「マルコ、今にローストポークになっちゃうから。私いやよ、そんなお葬式。」

ポルコ「飛ばねぇ豚はただの豚だ

ジーナ「バカ!」

ポルコにこれ以上危険な目にあってほしくないという気持ちを、ジーナはユーモアを込めて伝えています。

それでも、ポルコは飛ぶことをやめないと宣言しているシーンです。

「飛ばない豚はただの豚だ」の意味を考える

ストレートに受け止めると「ポルコは飛ぶことをやめない」というのがこのセリフの意味になります。

ただこのセリフは『紅の豚』に込められた意味を踏まえると、さらに深みのあるセリフになるのです。

以下ではこのセリフを「飛ばない」「ただの豚」の2つに分けて考察してみます。

「飛ばない」の意味

ポルコにとって「飛ぶ」とは言葉通り大空を飛び回ることです。

では宮崎駿監督はこのセリフにどういった意味を込めているか、もう少し抽象化して考えてみます。

ヒントは宮崎駿監督の過去のインタビューにありました。

やりたくないものはやらない。(中略)俺は俺、俺の魂の責任は俺が持つんだ。豚はそういう男なんです。それが、これから生きていく上で必要だなと、自分も切実に思ったから。

ジブリの教科書7紅の豚(文春ジブリ文庫)宮崎駿監督インタビューより引用

ポルコにとって「飛ぶ」ことはやりたいことなのです。

国家のしがらみや争いに巻き込まれることなく、自分の責任で「飛ぶ」と決めているのです。

「飛ばない」の意味を抽象化すると「自分のやりたいことから目を背けている」と読み取れるのではないでしょうか。

「ただの豚」の意味

そもそもポルコはなぜ豚の姿なのか?

これは映画を見た誰もが一度は考える疑問ではないでしょうか。

ポルコは以下のような理由から、自分自身で豚になる魔法をかけたとされています。

  • 空軍時代の自分自身の行為に対する自責の念
  • 国家や争いから距離を取るため
  • ジーナとの仲を深め、これ以上悲しませないため

※ポルコが豚になった理由は以下の記事で詳細に解説しています。

ポルコは複雑な感情・苦しみを抱えながら「豚になる」という選択をしたわけです。

ちなみに宮崎駿監督は『紅の豚』を「中年の映画」と位置づけ、以下のようにも語っています。

もういっぱい経験してきた人間たち。取り返しのつかないこともいっぱい持っている人間たちなんです。(中略)豚も自分の汚れが晴れて、やり直しがきいて、これでまっさらになったなんて思わないですね。

ジブリの教科書7紅の豚(文春ジブリ文庫)宮崎駿監督インタビューより引用

つまり『紅の豚』における「豚」は悲しみや苦しみも含め、数々の経験を重ねた中年の象徴なのです。

「ただの豚」を「酸いも甘いも知った大人たち」と読み替えると見方が変わってくるのではないでしょうか。

「飛ばない豚はただの豚だ」の意味

「飛ばない」=「自分のやりたいことから目を背けている」

「ただの豚」=「酸いも甘いも知った大人たち」

これまでの考察を踏まえて、あらためて「飛ばない豚はただの豚だ」の意味を考えてみます。

ある意味で現実を見て、自分の本音に蓋をして生きている大人は多いのではないでしょうか。

そんな状況であれば「飛ばない豚はただの豚だ」は刺さります。

酸いも甘い知って、現実も見えてきているけど、せめてやりたいことくらいやろうぜ。
自分に正直に生きようぜ。

私はポルコからこう言われている気がしてきました。

いや、厳密にはポルコは他人に価値観を押し付けることはないでしょう。

ただ、ポルコのカッコイイ生き様を見て、(中年の)私は背中を押される気がしました。

映画中盤で登場するフェラーリン少佐のセリフ「飛んだところで豚は豚だぜ」も秀逸な名セリフです。

フェラーリン少佐はまさに「現実を見た大人」であり、ポルコとの対比関係に描かれています。

フェラーリン少佐も魅力的なキャラクターですので、ぜひ注目してみてください。

【よくある誤解】「飛べない豚はただの豚だ」では意味が大きく変わる

「飛ない豚はただの豚だ」と誤解している方は意外と多いです。

ただ、この誤解した状態ではせっかくの名セリフの意味が大きく変わってしまいます。

ポルコは「飛べる/飛べない」「できる/できない」という話をしているわけではありません。

「飛ぶ/飛ばない」「やる/やらない」の意志の話をしているのです。

ちなみにこのセリフの時点ではポルコの飛行艇は壊れていました。

そういう意味では、その時ポルコは飛べない豚だったわけですね(笑)

『紅の豚』のまとめ記事はこちら!

『紅の豚』の都市伝説や考察のまとめなど、『紅の豚』の魅力を1記事にまとめています。ぜひ合わせてご覧ください。

『紅の豚』の記事執筆における参考書籍

まつぼくらぶでは『紅の豚』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。

  • ジブリの教科書7 紅の豚(文春ジブリ文庫)
  • 宮崎駿の雑想ノート(大日本絵画)
  • スタジオジブリ絵コンテ全集7 紅の豚(徳間書店)
ジブリの教科書7 紅の豚(文春ジブリ文庫)

過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。

著:スタジオジブリ, 編集:文春文庫編集部
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宮崎駿の雑想ノート(大日本絵画)

『紅の豚』の原作『飛行艇時代』が収録されています。

著:宮崎 駿
¥3,080 (2023/04/28 09:28時点 | Amazon調べ)
スタジオジブリ絵コンテ全集7 紅の豚(徳間書店)

『紅の豚』の制作に使用された絵コンテです。

なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。

紅の豚 スタジオジブリ場面写真

当記事の拡散は大歓迎です

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