『パン種とタマゴ姫』は、ジブリ美術館で上映される短編アニメーションです。
2010年に公開された宮崎駿監督の完全オリジナル作品で、ジブリファンの間では絶賛する声も多い名作です。
当記事では、『パン種とタマゴ姫』について内容や実際に見た感想、パンフレットについて紹介します。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事はネタバレを含みますのでご注意ください。
『パン種とタマゴ姫』のあらすじ・見どころ
『パン種とタマゴ姫』のあらすじは、ジブリ美術館のホームページ上では以下のように記載されています。
いばらの森のその奥の水車小屋に暮らす、バーバヤーガに召し使いにされた「タマゴ姫」は水車小屋に閉じ込められ、重労働に追われるつらい毎日でした。
ある夜、バーバヤーガの言いつけでこねていたパン種が、突然生命を持ち、動き出します。
その「パン種」とともに、恐ろしいバーバヤーガから逃げ出すタマゴ姫。二人のこの先はどうなるのでしょう。
ジブリ美術館ホームページより引用
『パン種とタマゴ姫』の基本情報
原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
公開年 | 2010年 |
上映時間 | 約12分 |
以下、この『パン種とタマゴ姫』の魅力について、若干のネタバレを含みながら紹介します。
「逃げる」というシンプルで分かりやすいストーリー
『パン種とタマゴ姫』のストーリーは単純明快で、たまごのタマゴ姫と、パン種(パンを焼く前の生地)が逃げ出すというストーリーです。
このアイデアのきっかけについて、宮崎駿監督は以下のように語っています。
ぼくらの国に「おもすびころりん」のお話があるように、パンを食べる国々にはパンが逃げ出すお話があるのを知りました。(中略)パンならコロコロところがって逃げるとして、パンになる前のパン種ならネバネバグニャグニャ逃げ出すのナァ・・・、そんなことを考えているうちに、この映画を思いつきました。
『パン種とタマゴ姫』パンフレットより引用
話の土台は「おもすびころりん」と同じ着想なのですね。
「逃げる」というシンプルなストーリーは、大人も子どもも幅広く楽しめる作品となっています。
セリフ無し!こだわりを感じるキャラクターの動き
『パン種とタマゴ姫』にはセリフがありません。
だからこそなのか、「絵で魅せる」ことへのこだわりが一層感じられる作品です。
作画監督を務めた高坂さんは、宮崎駿監督のこだわりについて以下のように語っています。
宮崎監督がこだわっていた事は、「この作品では、動機の説明はしたくない。キャラクターが何を考え感じているかは、観るひとが考え感じてくれればいい。だから、キャラクターにも作為的な表情をつけない」ということがひとつと、もうひとつは「正体を捕まれないようにする」です。つまり、「ああ、これはよく見る○○と一緒ね」と言われないものにする事なんですね。
『パン種とタマゴ姫』パンフレットより引用
『パン種とタマゴ姫』のキャラクター(特にパン種)は、とにかく動きが不思議で面白いです。
初めて見たときは意味不明な動きにも感じられましたが、それこそが宮崎駿監督のこだわりだったわけですね。
ぜひパン種たちの「はじめて見る動き」に注目してみてください。
鈴木敏夫プロデューサーも絶賛の完全オリジナル作品
『パン種とタマゴ姫』は宮崎駿監督が原作・脚本・監督を務めた完全オリジナル作品です。
これをスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが絶賛しています。
映画監督の押井守さんとの対談で『パン種とタマゴ姫』について、「凄まじい」「ぜひ」と押井守さんに勧めているのです。
『パン種とタマゴ姫』はジブリ美術館限定ということもあり、ジブリ作品の中では知名度はイマイチです。
ただ、ファンの間でも評価する声は多く、隠れた名作と言えるでしょう。
『パン種とタマゴ姫』の魅力的なキャラクター
『パン種とタマゴ姫』のメインキャラクターは以下の3名です。
- タマゴ姫
- パン種
- バーバヤーガ
ここでは、この3キャラクターの魅力を紹介します。
『パン種とタマゴ姫』の町の人々はウサギの姿で描かれています。
普段の宮崎駿監督作品では、人間を動物化する場合は豚の姿が多いため不思議でした。
ウサギの姿である理由については「いつもよりまじめに働く人々を描きたかった」とパンフレットの中で明かしています。
小さくてかわいい「タマゴ姫」
タマゴ姫はパンフレットの表紙にも大きく描かれているとおり、『パン種とタマゴ姫』の主人公です。
小さく可愛いキャラクターで、我が家にも連れて帰りました(笑)↓
タマゴ姫の主な特徴は以下のとおりです。
- 割れない卵にバーバヤーガがフッと一息かけたことで、タマゴ姫が誕生
- タマゴ姫はとにかく一生懸命で働き者
- パン種を連れて逃げ出す際は、パン種の手をひいて全力で逃げる
- ストーリーの終盤ではタマゴ姫の両親?(王様と妃様の姿)も映し出される
タマゴ姫は割れない卵として描かれます。
バーバヤーガの食料の中に混ざっていたので卵だと思ってしまいますが、本当はそもそも「卵」ではないのかもしれません。
ストーリーの終盤ではタマゴ姫の両親と思われる「卵」も描かれており、こうした白くて丸い生き物がいる世界なのかもしれません。(バーバヤーガの魔法でタマゴ姫が作られたなら、他にも似た存在がいるのは辻褄があいませんよね)
セリフが無く、解釈は観客に委ねられていますが、タマゴ姫の正体を考えてみるのは面白いですね。
パンフレットによると、当初は人間の女の子とパン種のストーリーになる案もあったようです。
「ボロを着ていてもかわいい女の子はちっともかわいそうな感じがしません。タマゴなら描きやすいし、可愛くてもいいやと思いました」と宮崎駿監督は語っています。
パン種の手を引いて一生懸命に走るタマゴ姫はとにかく可愛いです。
一度見ていただけると、思わずタマゴ姫グッズを買ってしまう気持ちも理解していただけるのではないでしょうか(笑)
動きがとにかく面白い「パン種」
パン種はその名のとおり、パンになる前のグニャグニャの生地です。
目はブドウ、鼻はリンゴの不思議な生き物です。
パン種くんもタマゴ姫も、それからこんな方も、そっとクリスマスに参加しています。いつもと違うものを身にまとった方たち、探してみてくださいね。 pic.twitter.com/upauoIQxGJ
— 三鷹の森ジブリ美術館 (@GhibliML) December 2, 2021
月の光を浴びて不思議と動き出したパン種は、タマゴ姫とともに逃げ出します。
この逃亡劇のパン種の動きはとにかく必見です。
はじめは虫の幼虫のように地面を這っていたパン種は、次第に二足歩行をはじめます。
こうした動きの変化や、グニャグニャとした不思議な動きは何度も笑わせてくれます。
そして最大のネタバレになりますが、終盤でパン種はバーバヤーガにつかまり、焼かれます。
カマドに放り込まれるシーンはハラハラドキドキしますが、こんがり焼けたパン種(パン)は、なんともたくましい姿になってカマドから出てきます。(ラピュタのロボット兵を彷彿とさせる立派な様子です)
グニャグニャのパン種は、たくましい立派なパンになるのです。
怖いばあちゃん「バーバヤーガ」
タマゴ姫とパン種を追いかけるのが、バーバヤーガです。
魔女をイメージさせる恐ろしい姿で描かれています。
時には空も飛びながらパン種とタマゴ姫を追いかけるバーバヤーガですが、宮崎駿監督はバーバヤーガについて「働き者でよく食べてよく寝る良い人」と表現しています。
追いかける姿は恐ろしく見えますが、確かに主食が逃げ出したら必死で追いかけますよね(笑)
パン種を焼いてパンにしてしまうのも当然です。そこに悪意はないでしょう。
『パン種とタマゴ姫』を実際に見た感想
たった12分の作品でしたが、その世界に引き込まれてしまいました。
ジブリ美術館の短編アニメーションはほぼ全て見ていますが、最も長編映画化してほしいと思ったのが『パン種とタマゴ姫』です。
セリフが無くてもストーリーやキャラクターの感情が伝わるのはさすがの表現力です。
観客からは何度も笑い声が上がる作品で、パン種が焼かれるシーンは最高でした。
簡単に見ることができない作品なのが惜しいです。大人から子どもにまで、オススメしたい作品です。
設定資料多数!『パン種とタマゴ姫』のパンフレットは必見
『パン種とタマゴ姫』をはじめ、ジブリ美術館の映画はパンフレットが売られています。
このパンフレットの中でも『パン種とタマゴ姫』は特にオススメです。
『パン種とタマゴ姫』は公開当時、ジブリ美術館で『パン種とタマゴ姫』に関する展示が行われたのですが、その際の資料が掲載されているのです。
「パン種とタマゴ姫が出来るまで」と題された資料はかなり細かく書き込まれており、めちゃくちゃ面白いです。
なお、パンフレットを正規のルートで購入する方法は以下のとおりです。
- ジブリ美術館内の図書室「トライホークス」で購入
※お土産屋「マンマユート」ではないので注意
※その時期に上映されてない作品も購入できます - ジブリ美術館オンラインショップで購入
※別途送料がかかります
※サウンドトラックとセット販売となっている作品もあります(1,547円)
『パン種とタマゴ姫』のパンフレットは正規の値段は500円(税込)です。
Amazonやメルカリ等にも出品はありますが、こちらはかなり割高なので避けましょう。
「土星座のパンフレットはジブリ美術館でしか買えない」という情報を逆手にとって、2000円以上の出品もザラにあります。
2,000円かけるならオンラインショップの送料も十分にカバーできますし、サウンドトラックセットを購入してもお釣りがきます。
正規のルートで購入しましょう。
外部リンク:ジブリ美術館オンラインショップ
【どこで見れる?】『パン種とタマゴ姫』が見れるのはジブリ美術館だけ
『パン種とタマゴ姫』を見ることができるのは、三鷹の森ジブリ美術館だけです。
今日から12月、2021年もあと一か月ですね。今年最後の土星座のえいがは『パン種とタマゴ姫』。
— 三鷹の森ジブリ美術館 (@GhibliML) December 1, 2021
最後に「えええ⁉」と思うびっくり展開から、スタッフのファンも、とても多い作品です。 pic.twitter.com/PxG2kFPY1v
動画配信も無ければ、DVDも販売されていません。
また、ジブリ美術館でも常に見れるわけではありません。
ジブリ美術館の小さな映画館「土星座」では、10種類の短編アニメーションが定期的に入れ替えで上映されています。
上映スケジュールを確認したうえで、ジブリ美術館のチケットを確保する必要があるのです。
上映スケジュールや作品の一覧等、土星座の詳細は以下の記事で詳細にまとめていますので、ぜひ合わせてご覧ください。