トトロのラストシーンといえば、サツキとメイがこっそりトウモロコシを置くシーンです。
せっかくお母さんの病室までたどり着いたのに、なぜ会わずに帰ったのだろう?と思った方も多いのではないでしょうか。
実際に様々な考察が生まれていますが、宮崎駿監督自身は答えを明らかにはしていません。
当記事では、この「トウモロコシ問題」について考察します。
スタジオジブリの正式な見解ではありませんが、参考になれば幸いです。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。
【おさらい】『となりのトトロ』のラストシーン
まずは簡単に、『となりのトトロ』のラストシーンをおさらいしましょう。
- ネコバスに乗ったサツキはメイと合流し、ネコバスはその足でお母さんの病院へ向かう
- 病院では元気そうな様子のお母さんとお父さんが談笑している
- 病院の庭の木の上から病室を見守るサツキとメイ
- 「お母さん笑ってるよ」と安心した様子のメイ
- お母さんがふと気が付くと、いつの間にか窓際にトウモロコシが置かれている
- 「いま、そこの松の木の上でサツキとメイが笑ったように見えた・・」とお母さんが一言
- お父さんがトウモロコシを見ると、そこには「おかあさんへ」と文字が刻まれていた
- そのまま、サツキとメイは帰路へ・・・(エンディングへ)
ネコバスの力を借りて病室にたどり着いたサツキとメイですが、そっとトウモロコシを置いて帰ってしまいました。
会いたくてたまらなかったはずのお母さんに、なぜ会わずに帰ってしまったのでしょうか。
このシーンに宮崎駿監督はどのような意味を込めていたのでしょうか。
以下、このラストシーンについて考察します。
【考察】お母さんに会わずにトウモロコシを置いた理由
当サイトでの考察にネット上の説も追加し、ここでは以下の6つの説を紹介します。
- サツキとメイの成長・気遣い
- トウモロコシを置くことが目的だった
- 元気そうなお母さんの姿を見て安心した
- 大騒ぎになっていたことを知られたくなかったから
- ネコバスに乗った状態なので、姿が見えなかった
- サツキとメイは亡くなっており、会えなかった
宮崎駿監督が明言した答えはありませんので、あながた一番納得いくものを信じて頂ければ幸いです。
以下、順番に解説します。
説① サツキとメイの成長・気遣い
お母さんに合わなかったのは、サツキとメイの気遣いであるという説です。
ネット上でもこの説は主流ですが、当サイトもこの説は有力であると考えています。
考え方は以下のとおりです。
- 皆がメイを探し回っているので、早く帰らなくてはならないと考えた
- 家から離れた病院に姿を表したら、両親を驚かせると考えた
- ドロドロの姿(サツキに関しては裸足)を見せると、両親を心配させると考えた
お母さんに会いたくてたまらないはずのサツキとメイです。
ただ、突然姿を見せるとお母さんもお父さんも驚き、心配するでしょう。
さらに、おばあちゃんやカンタ、近所の人たちはメイを探し回っています。
一刻も早く戻り、無事を伝えて安心させてあげたいところです。
こういった周りの人たちへの気遣いをお母さんに会いたい気持ちよりも優先したのです。
どちらかといえばメイよりもサツキが考えそうなことですが、2人の成長が感じられますね。
説② トウモロコシを置くことが目的だった
ネット上ではあまり見ない説ですが、個人的には有力だと考えているのがこちらです。
単純にメイの目的が「トウモロコシを届けること」だったという考え方です。
- メイの収穫したトウモロコシを食べれば、母は元気になるとメイは確信していた
- メイが病院へ向かった目的は、トウモロコシを母に届けること
- 母に会うことは目的ではなかったため、トウモロコシを置いたことで目的を果たした
- 目的を果たしたので、ついでに母に会うことはなく、あっさり帰路についた
これは私自身が我が子(当時4歳)を観察する中でピンときた説です。
子どもって「これ!」と決めたことにはこだわりますが、その目的を果たすとビックリするほどあっさりしていることってありませんか?(もちろん、性格の問題もあると思いますが)
「トウモロコシを届けたついでに、お母さんに甘えちゃおう!」といったように、「ついで」という発想がないように見えるのです。
メイの目的はお母さんに会うことではなかったため、病室で甘えることなど頭の片隅にも無かったのかもしれません。
宮崎駿監督はこうした描写はかなりこだわりますので、個人的には有力な説です。
皆が探している状況をサツキに知らされて、トウモロコシを置いてさっさと帰ったと考えても違和感はありません。
説③ 元気そうなお母さんの姿を見て安心した
こちらはネットで頻繁に見かける説ですが、やや根拠に弱いです。
この説の理屈は以下のとおりです。
- 病院へ到着したサツキとメイは、元気そうな姿の母を発見した
- 父と談笑する母を見て、サツキとメイは安心した
- 安心したので会うことはなく、そっとトウモロコシを置いて帰った
たしかにそれっぽいですよね。
安心したので会わなかったという流れは自然ですが、トウモロコシを置くところはやや不自然です。
せっかく持ってきたので置いて帰ったとも考えられますが・・・
説④ 大騒ぎになっていたことを知られたくなかったから
ある意味で子どもらしい、少々自分勝手な考え方がこちらの説です。
この説の内容は以下のとおりです。
- 両親の前に姿を表したら、何があったか説明しなくてはならない
- おばあちゃんや周囲の人に迷惑をかけたことを知られてしまう
- 怒られたくないので、会わずに帰ることにした
いくつかのサイトでこの説が紹介されていましたが、個人的にはサツキとメイらしくはないと思います。
一番子どもらしいといえば子どもらしい説ではありますね(笑)
説⑤ ネコバスに乗った状態なので、姿が見えなかった
こちらもいくつかのサイトで紹介されていたものですが、ネコバスに乗っていたので姿が見えなかったというものです。
姿が見えないので、会いたくても会えないというわけですね。
ただ正直、この説は微妙です。
以下のシーンを見ても、病院に到着したサツキとメイは一度ネコバスを降りています。
ネコバスを降りているので、姿が見えなくて会えなかったという理屈は成り立ちませんよね。
考察としては面白いと思ったので紹介しましたが、少々矛盾が生まれてしまっています。
説⑥(デマ) サツキとメイは亡くなっており、会えなかった
都市伝説として一時期はやったのがこちらの説です。
サツキとメイは実は亡くなっており、会いたくても会えなかったという内容です。
この説については、スタジオジブリが公式に否定したことで、噂は終息しました。
一時期流行った都市伝説は以下の記事で紹介していますので、気になる方は参考にご覧ください。(あくまでもスタジオジブリは否定していますので、その前提でご覧ください)
『となりのトトロ』のキーアイテム「トウモロコシ」の意味
ラストシーンの意味を深く考えるにあたって、「トウモロコシ」の意味を考えることは重要です。
トウモロコシを収穫する際、お婆ちゃんとメイは以下のように発言しています。
お婆ちゃん「ばあちゃんの畑のもの食べりゃ、すぐ元気になっちゃうから」
メイ「メイがとったトウモコロシ、お母さんにあげるの!」
メイはお母さんを元気づけるために、最初からトウモロコシをお母さんにあげるつもりだったのです。
トウモロコシについては、宮崎駿監督も以下のように語っています。
これをお母さんに届けたら、お母さんは元気になるわけでしょう。そしたら、トウモロコシはメイにとって、キイワードなんですよ。トウモロコシをあげれば、お母さんは治るに違いない、お婆ちゃんがああいったんだし。しかも、このトウモロコシはお母さんが大好きなメイがとったトウモロコシだ。
ロマンアルバム となりのトトロ 宮崎駿監督インタビューより
要するに、メイにとってトウモロコシは「お母さんを元気にする魔法のアイテム」なのです。
病院からの電報を受けてお母さんの危険を感じ取ったメイは、決意の表情でトウモロコシを抱えて走りだしました。
メイがトウモロコシを届けることで、お母さんは元気になる。
お母さんは元気にメイの元に帰ってくる、と確信していたのです。
メイが置いたトウモロコシには、このような意味が込められています。
この意味を踏まえたうえで、ぜひあらためてラストシーンの意味を考えてみてくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
『となりのトトロ』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『となりのトトロ』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- ジブリの教科書3 となりのトトロ(文春ジブリ文庫)
- ロマンアルバム となりのトトロ(徳間書店)
- スタジオジブリ絵コンテ全集 となりのトトロ(徳間書店)
- ふたりのトトロ(講談社)
- ジブリの教科書3 となりのトトロ(文春ジブリ文庫)
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過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。
- ロマンアルバム となりのトトロ(徳間書店)
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インタビューや設定情報が記載された公式のムック本です。
- スタジオジブリ絵コンテ全集 となりのトトロ(徳間書店)
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『となりのトトロ』の制作に使用された絵コンテです。
ポチップ - ふたりのトトロ(講談社)
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『となりのトトロ』で制作デスクを務めた木原浩勝さんの著書です。
デスク目線でのエピソードが掲載されている貴重な資料です。2018年出版と、比較的新しいのも特徴です。
ポチップ
なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。