当記事では、スタジオポノック作品『屋根裏のラジャー』の原作『ぼくが消えないうちに』について紹介します。
原作を知ることで『屋根裏のラジャー』をより深く楽しむことができるようになります。
参考になれば嬉しいです。
以下の記事では『屋根裏のラジャー』のストーリーを徹底解説していますので、合わせてご覧ください。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。
『屋根裏のラジャー』の原作は『ぼくが消えないうちに』
『屋根裏のラジャー』の原作はイギリスの児童文学『ぼくが消えないうちに』です。
この原作を見つけた西村プロデューサー自身が企画・脚本を手掛け、百瀬監督に引き渡しています。
『ぼくが消えないうちに』の基本情報
タイトル(英語) | The Imaginary |
タイトル(日本語訳) | ぼくが消えないうちに |
分類 | 児童小説 |
出版年 | 2014年10月 |
作者 | アシュリー・フランシス・ハロルド |
『屋根裏のラジャー』の公開直前、23年11月には手軽に読める文庫版も出版されています。
『ぼくが消えないうちに』のあらすじ
『ぼくが消えないうちに』の簡単なあらすじは以下のとおりです。
- 想像力豊かな少女アマンダは、自分だけに見える友だち・ラジャーと毎日想像の世界を冒険していた。
- ラジャーは想像によって生まれた「イマジナリ」であった
- ある日、ラジャーの元に謎の男・ミスター・バンティングが現れる
- バンティングはイマジナリを食べることで生きながらえているイマジナリの天敵であった
- バンティングから必死で逃げる際、アマンダは交通事故で気を失ってしまう
- アマンダの記憶からラジャーが消えかけることにより、ラジャー自身も消えそうになる
- 消えかけたラジャーはイマジナリの町にたどり着き、イマジナリの仲間と過ごすこととなった
- アマンダともう一度過ごしたいラジャーは、アマンダの入院する病院を目指すのであった・・
『屋根裏のラジャー』を見た方は、『屋根裏のラジャー』と同じだと気が付くのではないでしょうか。
スタジオジブリ作品(特に宮崎駿監督作品)は、原作をダイナミックに変えながら時には原型をとどめないストーリー展開を見せますので、ジブリと同じ感覚で見ると意外かもしれません。
『屋根裏のラジャー』のストーリーは原作にほぼ忠実に作られているのです。
とはいえ、原作小説では描ききれていない深みや美しさが、『屋根裏のラジャー』では表現されています。
ここからは、『屋根裏のラジャー』と原作の違いについて紹介します。
『屋根裏のラジャー』と原作の違い
『屋根裏のラジャー』は原作に忠実なストーリー展開ですが、細かい設定は異なっています。
特徴的な設定の違いについて、列挙してみましょう。
『屋根裏のラジャー』 | 『ぼくが消えないうちに』 |
---|---|
お父さんは数か月前に亡くなった | お父さんはアマンダが生まれる前に亡くなった |
小雪ちゃんはピンクのカバ | 小雪ちゃんはピンクのティラノサウルス |
ホネッコ・ガリガリはガイコツ | ホネッコ・ガリガリはテディベア |
イマジナリの町は世界中の町に姿を変える | イマジナリの町が姿を帰る描写はない |
イマジナリとしての初仕事は、少年・ジョンと楽しく遊ぶ | イマジナリとしての初仕事は、イマジナリが見えない少年・ジョンに怖がられてしまう |
エミリーはバンティングに消されてしまう | エミリーはバンティングに食べられてしまう |
黒髪の少女は最後は自らバンティングの口に飛び込んだ | 黒髪の少女は、レイゾウコに突進されたことでバンティングに食べられてしまった |
『屋根裏のラジャー』でラジャーは、お父さんが亡くなった悲しみを埋めるための存在でした。
『屋根裏のラジャー』における重要な設定ですが、実はこれは原作には一切無いオリジナルストーリーです。
原作ではアマンダはあくまでも「想像力豊かな少し変わった子」として描かれています。
登場人物の背景がしっかりと描かれ、深みのあるストーリーに仕上げたのがスタジオポノックの力です。
また、『屋根裏のラジャー』では原作以上にイマジナリのキャラクターや世界も美しく、楽しく描かれていました。
小雪ちゃんやホネッコ・ガリガリの設定も違いますし、その他の様々なイマジナリもスタジオポノックが考えたキャラクター達です(ピカソ等の著名人のイマジナリが出てくる等、遊び心も感じられましたね)
『ぼくが消えないうちに』を読んだ個人的な感想
私は『屋根裏のラジャー』を見た後で、『ぼくが消えないうちに』を読みました。
設定や世界観が面白く、児童小説ということもあって1日であっという間に読み終わってしまいました。
読み終わった率直な感想は「スタジオポノックすごい・・!」ということです。
『ぼくが消えないうちに』は面白いのですが、やはりあくまでも児童小説です。
ラジャーを中心に楽しい冒険を繰り広げ、最後は悪役のバンティングは痛い目を見るというありがちな物語です。
このストーリー展開は維持しつつ、『屋根裏のラジャー』で登場人物に深みを持たせたのはスタジオポノックです。
父を失った家族の心理や、イマジナリ同士の友情、悪役バンティングの純粋な気持ち等、大人でも心動かされる場面は多い作品に仕上がっていました。
原作を忠実にアニメ化したわけではなく、スタジオポノックの解釈・スパイスが加わったことで、名作に仕上がったのですね。