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【もののけ姫】伝えたいことは何?意味・メッセージを考察【難しい映画?】

もののけ姫_ メッセージ

映画『もののけ姫』を見て「難しかった」「結局何が言いたいの?」という感想を抱く方は多いです。

『もののけ姫』はセリフでは多くを語らないため、そういった感想を抱いても不思議ではありません。

当記事では、宮崎駿監督の過去インタビュー等を参考に、映画『もののけ姫』のメッセージについて考察します。

筆者のプロフィール
  • スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
  • 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
  • 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」

当記事は映画「もののけ姫」を一度は見ている方向けに執筆しています。
結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。

目次

『もののけ姫』が伝える2つの大きなメッセージ

『もののけ姫』は一見すると、「環境破壊反対!」等といった自然保護の映画に見えてしまいます。

自然(シシ神の森・サン)VS人間(たたら場・エボシ)の構図で語られているため「環境問題の映画だ」と理解するのは自然の流れでしょう。

ただ、宮崎駿監督が描きたかったのは単なる環境問題ではありません。

ここでは、以下の順番で解説します。

  • 自然と人間の意味
  • 理不尽に負けない「生きろ。」のメッセージ

単なる環境問題映画ではない。自然と人間の意味

「『もののけ姫』は環境問題を題材にした映画だ」こういった評論を目にすることは多いですが、宮崎駿監督はそれを明確に否定しています。

「環境問題をメッセージとしたわけではない」と過去のインタビューで語っているのです。

僕は自然環境の問題をメッセージとしてこの映画を作ったわけではありません。
(中略)
地球環境と人間を分けるのではなくて、人間も他の生き物も、地球環境も、水も空気も全てひっくるめた世界の中で、人間の中に次第に増えていく憎しみを人間が乗り越えることが出来るかどうかということも含めて、映画にしたかったんです。

ジブリの教科書10『もののけ姫』宮崎駿監督インタビューより

『もののけ姫』は自然と人間の対立を描いているわけではありません。

自然保護が「善」であり、人間(自然破壊)は「悪」である、といった映画でもないのです。

だからこそ、主人公であるアシタカはサン、エボシのどちらの味方にも付きません。

最後まで中立の立場をとり「共に生きる道」を探しています。

自然破壊の善悪については、宮崎駿監督は以下のようにも語っています。

森を壊し、自然を壊す人間たちを悪人で、レベルが低くて、野蛮な人たちだと言うのなら、人間の問題というのはずいぶん解決しやすいんです。そうじゃなくて、人間の最も善なる部分を押し進めようとした人間たちが、自然を破壊するところに人間の不幸があるんです。

ジブリの教科書10『もののけ姫』宮崎駿監督インタビューより

この宮崎駿監督の発言は、エボシを思い浮かべるとイメージしやすいのではないでしょうか。

エボシは自然を破壊する者であり、サンをはじめとしたシシ神の森の住人からみれば「悪」です。

一方でエボシは、病人や社会的弱者を守る立場としても描かれており、たたら場の住人にとってはヒーローです。

エボシにとっては森を破壊することは、たたら場を守るために必要な正義(最も善なる部分)なのです。

この正義を押し通した結果、最終的には「たたら場の崩壊」という結末を迎えています。

『もののけ姫』は自然との対立を描いているのではなく、人間の行為の結果生まれる不幸、つまり「人間がこれまでにやってしまったこと」へのメッセージなのです。

『もののけ姫』のメッセージを考えるうえで、サンの立場を理解することも重要です。

これについては宮崎駿監督はインタビューの中で回答してくれています。

サンは、自然を代表しているのではなくて、人間の犯している行為に対する怒りと憎しみを持っている。つまり今現代に生きている人間が人間に対して感じている疑問を代表しているんです。

ジブリの教科書10『もののけ姫』宮崎駿監督インタビューより

サンはシシ神の森の住人として戦いますが、サン自身は人間です。

これはまさに「環境問題」を認識し始めた現代の人間に重なる立場なのです。

「現代の人間」を整理
  • 過去の自然破壊の結果、不幸(大気汚染、水質汚染、生物の絶滅・・等)を生んでいることに気が付き始めた
  • 地球にとって「人間」は害悪な存在なのではないかと感じることがある
  • 過去の自然破壊行為や、今もなお止まらない自然破壊に怒りや疑問を感じている

サンは極めて極端な立場ですが、少なからず自然破壊に疑問を感じている現代人は多いのではないでしょうか。

人間の活動の結果、環境は汚染し、多くの生物は絶滅の危機にあります。

こういった状況で「人間の存在意義」に疑問を感じている方もいるでしょう。

これが宮崎駿監督の言う「人間が人間に対して感じている疑問」ではないでしょうか。

そしてサンは自然の代表ではなく、こういった現代人の代表なのです。

理不尽に負けない「生きろ。」のメッセージ

『もののけ姫』は「人間がこれまでにやってしまったこと」へのメッセージであり、「人間が人間に対して感じている疑問」を題材にしています。

そのうえで発信される強烈なメッセージが、キャッチコピーにもなった「生きろ。」です。

人間が人間の存在に疑問を持ち始めたこの時代に、そうした疑問が大人や哲学者だけの問題じゃなくて、子供たちの中にも本能的に広がっているのを感じて、自分はその疑問についてどう考えているのか答えなければならないと思ったからです。この映画を作った一番の理由は、日本の子供たちが「どうして生きなきゃいけないんだ」という疑問を持っていると感じたからです。

ジブリの教科書10『もののけ姫』宮崎駿監督インタビューより

「生きろ。」のメッセージを考えるうえで、『もののけ姫』の登場人物の理不尽な状況を理解しておくことが重要です。

アシタカの立場
  • 大和との戦に敗れ、東北の地に追いやられたエミシの一族
  • 遠く離れた場所での争いの結果生まれた「たたり神」に村が襲われる
  • 村を守るためにたたり神を攻撃した結果、呪いを受けてしまう
  • 呪いを受けたアシタカは村を追放され、西の地へ旅立つ
サンの立場
  • サンの両親はモロから逃れるために、サンを身代わりとして捨てた
  • モロは狼でありながら、サンを娘として育てた
  • サンは人間にもなれず山犬にもなりきれない立場
エボシ(たたら場の住人)の立場
  • たたら場には武士や商人等、現代で言う「中流~上流階級」の者はいない
  • 売られた娘や、病人等の社会的な弱者をエボシが拾って面倒を見ていた
  • 仲間や家族を自然(モロ)に奪われ、サンやモロを恨んでいる

それぞれ立場は違えど、理不尽で辛い環境に置かれています。

特筆すべきは、本人には何の落ち度も無いのです。

こうした環境の中でいかに憎悪をコントロールし、愛情をもって「生きる」ことができるか。

これが『もののけ姫』のメッセージなのではないでしょうか。

憎悪のコントロールは宮崎駿監督自身も以下のように語っています。

『もののけ姫』の中の非常に大事な部分として、コントロールできなくなってしまった憎悪をどうやったらコントロール出来るかっていうテーマがあるんです。そこで僕に課せられた課題は、サンの人間に対する憎しみをアシタカの愛情で和らげることが出来るだろうかということでした。

ジブリの教科書10『もののけ姫』宮崎駿監督インタビューより

アシタカ自身も辛い立場に置かれていながら、アシタカはエボシとサンの間で「共に生きる道」を模索します。

最終的には「シシ神の森」も「たたら場」も崩壊し、決してハッピーエンドとは言えない結末に終わります。

それでもアシタカやサン、エボシをはじめ各登場人物は爽やかな表情で前を向きました。

二十一世紀の混沌の時代にむかって、この作品をつくる意味はそこにある。

世界全体の問題を解決しようというのではない。荒ぶる神々と人間の戦いにハッピーエンドはあり得ないからだ。しかし、憎悪と殺戮のさ中にあっても、生きるにあたいする事はある。素晴らしい出会いや美しいものは存在し得る。

ジブリの教科書10『もののけ姫』宮崎駿監督インタビューより

『もののけ姫』と時代は違えど、現代においても理不尽は山ほど降り注ぎます。

当記事の前半で触れた「環境問題」もまさにそうです。

「環境問題」は過去から現代に至る人間の行為の積み重ねです。

現代は環境保護に尽力する人であっても、過去の人間の行いの代償により苦しめられるのです。

その他にも病気や事故、犯罪、いじめなど、突然の不幸に巻き込まれる可能性はあるでしょう。

そうした環境の中でも、憎悪に支配されるのではなく「生きろ。」というのが『もののけ姫』のメッセージです。

『もののけ姫』映画公開直後の世の中の反応

『もののけ姫』は興行収入193億円を記録し、当時『E.T.』が保持していた日本の歴代興行収入記録を塗り替える大ヒットを果たしました。(のちに『千と千尋の神隠し』や『タイタニック』、『鬼滅の刃』等に抜かれます)

中でも10代の子ども、若者から多くのメッセージが寄せられたそうです。

「ジブリの教科書10『もののけ姫』」では「虚構の時代に道筋示す メッセージ「生きろ」に若者反応」とした映画公開当時の記事が掲載されています。

  • 強くなれた。もう死のうとは思わない
  • ずっと、私は誰かに生きろと言ってもらいたかったのです
  • 少しだけ前向きになれた

こういったコメントが並んでおり、『もののけ姫』のメッセージは確かに届いたのだと言えるのでしょう。

たくさんの反応が聞こえて、ティーンエイジャーの反応が、一番僕の想いと一致しているので、最初の計画が正しかったと思いました。

ジブリの教科書10『もののけ姫』宮崎駿監督インタビューより

『もののけ姫』のメッセージをシンプルにまとめてみる

ここまで長々と解説してきましたが、最後にシンプルに『もののけ姫』のメッセージをまとめてみます。

『もののけ姫』のメッセージ
  • 「自然」が善、「人間(自然破壊)」が悪、という話ではない
  • 「人間がこれまでにやってしまったこと」へのメッセージ
  • 理不尽の中でいかに憎悪をコントロールし、愛情をもって「生きる」ことができるか
  • 生きろ

そもそもシンプルに語れる映画ではないので、ぜひもう一度『もののけ姫』を見直してみてください。

何度見ても新しい発見がある素晴らしい映画です。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

『もののけ姫』の記事執筆における参考書籍

まつぼくらぶでは『もののけ姫』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。

  • ジブリの教科書10 もののけ姫(文春ジブリ文庫)
  • ロマンアルバム もののけ姫(徳間書店)
  • 絵本 もののけ姫(徳間書店)
  • スタジオジブリ絵コンテ全集11 もののけ姫(徳間書店)
ジブリの教科書10 もののけ姫(文春ジブリ文庫)

過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。

ロマンアルバム もののけ姫(徳間書店)

インタビューや設定情報が記載された公式のムック本です。

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『もののけ姫』の原作とされています。
※内容は映画と異なり、初期構想のイメージボードです。

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『もののけ姫』の制作に使用された絵コンテです。

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なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。

もののけ姫 スタジオジブリ場面写真

当記事の拡散は大歓迎です

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