当記事では『もののけ姫』に登場する村娘・カヤについて考察します。
カヤは登場シーンこそ少ないものの、(小刀問題など)ファンの間で話題に上がることが多いキャラクターです。
当記事では過去の宮崎駿監督インタビュー等を参考に、カヤについて徹底解説します。
当記事の情報が参考になれば幸いです。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は映画「もののけ姫」を一度は見ている方向けに執筆しています。
結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。
『もののけ姫』カヤの基本設定
カヤの基本設定は以下のとおりです。
本名 | カヤ |
年齢 | 13歳 |
職業 | エミシの村に住む少女 |
声優 | 石田ゆり子 |
エミシの隠れ里に住む少女。アシタカを慕っており、旅立つアシタカを掟を破ってまでして見送り、玉の小刀を手渡した。
ロマンアルバム もののけ姫(徳間書店)より引用
カヤの声優は女優の石田ゆり子さんです。
石田さんは『もののけ姫』のヒロイン・サンの声優も務めています。
カヤといえばアシタカとの別れのシーンが印象的ですが、祟り神に刀を抜いて立ち向かう等、勇敢な一面も持ちます。
アシタカと共に村の未来を期待された存在だったと考えられます。
カヤはアシタカの許嫁
見た目も幼く、アシタカのことを「あにさま」と呼ぶことから、カヤをアシタカの妹だと思っている方は多いです。
ただ、これは誤解で、カヤはアシタカの妹ではありません。
『もののけ姫』の公式本、ロマンアルバムにも以下のように記載されています。
カヤは、アシタカを兄さまと呼ぶが、これは一族の中での年長の男子という意味合いのもの。カヤはアシタカの妹ではない。アシタカを好きだったのに・・・。
ロマンアルバム もののけ姫(徳間書店)より引用
さらに宮崎駿監督はカヤとアシタカの別れのシーンの演技指導で、カヤはアシタカの許嫁であることを明らかにしています。
※「もののけ姫はこうして生まれた(徳間書店)」の中に収録されています
カヤはアシタカの嫁さんになるつもりだったんですよ。そういうふうに周りもそれを認めてるんです。
「もののけ姫はこうして生まれた」より
「玉の小刀」の意味
アシタカ批判の原因になる「玉の小刀」は、カヤがアシタカに贈った大切な品です。
ジブリ公式本によると、これには以下のような意味が込められています。
黒曜石のナイフのこと。黒曜石はガラス状に薄くさけることから石器として珍重され、縄文時代の重要な交易品だった。アシタカの村では、乙女が変わらぬ心の証に、異性へ贈るものとされる。
ロマンアルバム もののけ姫(徳間書店)より引用
呪いを受けて村を追放されるアシタカへの、カヤの悲痛な想いが読み取れますね。
「玉の小刀」をアシタカに贈るということは、カヤは「一生涯アシタカを想い続ける」ことの宣言と考えられます。
ただ、今回のカヤとアシタカのケースは単純な男女の絆というわけではありません。
以下、考察が続きます。
【考察】『もののけ姫』の小刀問題?アシタカはカヤを裏切ったのか?
カヤが想いを込めた玉の小刀を、アシタカはのちにサンにあげてしまいます。
カヤに対して「いつもカヤを思う」と言っていたにも関わらず、あっさりサンに譲ってしまう姿には批判の声も多いです。
金曜ロードショーですらこのようなツイートを投稿しています↓
今、アシタカがサンに、と言って渡したのはカヤから「私の身代わりに」と言ってもらった小刀の飾りですよね……なんかカヤのことを思うと切なくなっちゃう私です・・・😢#アシタカ #サン #カヤ #もののけ姫 #小刀の飾り #秋のジブリ #kinro #秋のファンタジー祭り pic.twitter.com/1fgZue98s9
— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) October 26, 2018
カヤ「お守りするよう息を吹き込めました。いつもいつも、カヤは兄さまを思っています。きっと、きっと…」
アシタカ「私もだ。いつもカヤを思おう」
「カヤが可哀想」
「アシタカはカヤを裏切った」
「アシタカ最低!」
このような批判の声は多いですが、ここでは少しアシタカを擁護する考察を披露してみます。
「アシタカは女たらし!最低!」という批判は的外れ
「いつもカヤを思う」と言ったにも関わらず、サンとイチャイチャしているアシタカは、それだけ見ると確かに最低です。
ただ、この「いつもカヤを思う」というセリフがどういった思いで生まれたかを考えると、少し見方が変わってきます。
カヤとアシタカの別れのシーンのアフレコの際、宮崎駿監督は以下のように説明しています。
※「もののけ姫はこうして生まれた(徳間書店)」の中に収録されています
- カヤはアシタカの許嫁で両想いだった
- カヤの命を助けたことで、アシタカは呪いを受けた
- 呪いを受けたアシタカは村から追放された
- マゲ(髪の毛)を切り落としているのは、村では人間でなくなったことを意味する
- 「人」でなくなり追放されたアシタカは二度とカヤには会えない
- 未練がましく別れてしまうと、カヤは辛くてたまらないはずなので、アシタカは男らしく去った
当初のアフレコにどうしても重みを感じられなかった宮崎駿監督は、このように裏話を披露しました。
このシーンは単なる男女の別れではないのです。
正しいことをしたはずのアシタカが理不尽にも呪いを受け、村を追放されているのです。
カヤとアシタカの別れは、「死別」同然の永遠の別れを意味しています。
その前提でアシタカの「私もだ。いつもカヤを思おう」のセリフを見てみましょう。
違和感を感じませんか?
許嫁との永遠の別れであるはずなのに、爽やかな笑顔なのです。
宮崎駿監督の説明の一部を再掲載しましょう。
未練がましく別れてしまうと、カヤは辛くてたまらないはずなので、アシタカは男らしく去った
つまりアシタカは、カヤとの別れが辛いものにならないよう、最大限に明るく男らしく振舞ったのです。
こう考えるとカヤが渡した玉の小刀も、単なる彼女から彼氏へのプレゼントとはわけが違います。
永遠の別れを覚悟した餞別の品と考えるのが自然でしょう。
以下のセリフも、婚約者たちが永遠の愛を誓ったセリフではありません。
むしろ永遠の別れを覚悟した、これまでの感謝のメッセージと捉えられるのではないでしょうか。
カヤ「お守りするよう息を吹き込めました。いつもいつも、カヤは兄さまを思っています。きっと、きっと…」
アシタカ「私もだ。いつもカヤを思おう」
人口の少ない村で、カヤが一途に追放されたアシタカを待つことを村が許すとも思えません。
村の存続のためには若い女性は子孫を残すことが求められるため、おそらくカヤは他の男性と結ばれることになるでしょう。
こうした背景を踏まえると「いつもカヤを思うって言ってたくせに・・!」という批判はやや的外れであると理解いただけるのではないでしょうか。
アシタカについては以下の記事でさらに詳細に語っていますので、ぜひ合わせてご覧ください。
アシタカがサンに小刀を渡した意味
アシタカがサンに玉の小刀をあげたメッセージは、シンプルに以下のような意味が込められていると考えられます。
- 無事を祈る気持ち
- 愛する気持ち
ここについて宮崎駿監督が明言したものはありませんが、映画の流れを見れば明らかです。
浅い表現を使うと、元カノからのプレゼントを今カノにプレゼントしたわけですが、『もののけ姫』の舞台は室町時代で物の価値が異なるので、ここは目をつむりましょう。
ちなみに、カヤから貰ったものを渡してしまう様子には、カヤとサンの声優を務めた石田ゆり子さんが抗議したという情報があります。宮崎駿監督はそれに対して「男ってこんなもん」と答えたということでした。
「男ってこんなもん」発言はネット上で多く紹介されていますが、当サイト(まつぼくらぶ)では宮崎駿監督自身の発言の根拠が見つけられませんでした。
【考察】カヤはアシタカの子どもを身ごもっている?
カヤはアシタカの子どもを身ごもっている、という説がネット上には存在します。
発信源をたどったところ、評論家の岡田斗司夫さんの考察のようです。
岡田さんは以下のような内容を根拠に、カヤがアシタカの子どもを身ごもったと考察しています。
- 小さな村で夜中に少女がこっそり会いに来て、玉の小刀(貞操のしるし)をあげるというのは、2人が人目を忍んで男女の関係になったことの暗喩
- カヤが自分も連れて行ってくれと言わないのは、既に子どもを貰っているから(アシタカの血筋は残り、カヤが受け継いだ)
- こういった小さな部族で男女が夜に会う、ということ自体が男女の関係にあったことを意味する
確かに面白い考察ですが、やや強引な印象も受けます(男女の関係にこじつけたいだけのような・・・笑)
宮崎駿監督自身が言及したわけでもありませんので、これはあくまでも考察の範囲、ということですね。
『もののけ姫』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『もののけ姫』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- ジブリの教科書10 もののけ姫(文春ジブリ文庫)
- ロマンアルバム もののけ姫(徳間書店)
- 絵本 もののけ姫(徳間書店)
- スタジオジブリ絵コンテ全集11 もののけ姫(徳間書店)
- ジブリの教科書10 もののけ姫(文春ジブリ文庫)
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過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。
- ロマンアルバム もののけ姫(徳間書店)
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インタビューや設定情報が記載された公式のムック本です。
- 絵本 もののけ姫(徳間書店)
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『もののけ姫』の原作とされています。
※内容は映画と異なり、初期構想のイメージボードです。 - スタジオジブリ絵コンテ全集11 もののけ姫(徳間書店)
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『もののけ姫』の制作に使用された絵コンテです。
なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。