当記事では『魔女の宅急便』の人気キャラクター「しゃべる猫」ジジについて解説します。
ジジの設定については原作とジブリ版では大きく異なっています。
当記事をご覧いただき、『魔女の宅急便』をさらに楽しんでいただければ嬉しいです。
以下の記事では『魔女の宅急便』のストーリーを徹底解説しています。
なかなかボリュームの多い記事ですが、この記事で『魔女の宅急便』の理解が深まれば嬉しいです。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。
『魔女の宅急便』で黒猫・ジジが喋る理由
ジジが喋る理由は、ジブリ版と原作とでは異なっています。
ここでは、ジブリの解釈と原作の設定を順番に解説します。
【ジブリの解釈】ジジはキキのイマジナリーフレンド
宮崎駿監督は過去のインタビューでジジについて、以下のように語っています。
あれはただのペットじゃなくて、もうひとりの自分なんですね。
だからジジとの会話っていうのは、自分との対話なんです。
ジブリの教科書 魔女の宅急便 より引用
要するにこれはイマジナリーフレンドですね。
子どもが自分の頭の中に作りがちな空想上の友達のこと。
頭の中の空想や、ぬいぐるみを友達に見立てて会話することもあります。
会話の練習や気持ちを表現する練習にもなり、子どもの健全な成長の過程であるとみられています。
映画の中でも、実はジジはキキ以外の人間とは会話をしていません。
ジジのセリフはキキの心の声でもあるのです。
実はジジのセリフと言うのは、キキと観客だけにしか聞こえていないのかもしれませんね。
【原作の設定】ジジは魔女のパートナー
「ジジはイマジナリーフレンド」という設定は宮崎駿監督オリジナルな設定です。
ジジは原作では、魔女のパートナーの喋るネコとして登場します。
魔女のパートナーの特別な黒猫だからこそ、ジジは会話ができるというわけです。
原作はファンタジーらしいシンプルな設定ですね。
『魔女の宅急便』でジジが喋らなくなった理由
『魔女の宅急便』では、ジジはラストシーンでも喋ることはありませんでした。
ジジはそもそも、なぜ喋らなくなってしまったのでしょうか。
以下のような観点で考えることができます。
- 【物語の描写】キキの魔力が弱まったから
- 【ジブリの解釈】キキが成長したから
- 【原作の解釈】キキが恋をしたから
それぞれについて順番に解説します。
【物語の描写】キキの魔力が弱まったから
ジジが喋らなくなるタイミングは、キキが飛べなくなるタイミングと重なります。
ジジが喋らないことに気が付いたキキは、ハッとした顔をして箒にまたがります。
飛べないことに気付いたキキは「魔法が弱くなってる…」と呟くのです。
素直にこの場面を受け取ると、魔法が弱まったからジジと会話ができなくなり、飛べなくなったと理解できますよね。
実はこれは宮崎駿監督の巧妙なミスリードです。
続けて、宮崎駿監督自身が語った「ジジが喋らなくなった理由」を解説します。
【ジブリの解釈】キキが成長したから
ジブリの設定では、ジジはキキのイマジナリーフレンドでした。
イマジナリーフレンドと会話ができないというのはどういう意味を持っているのでしょうか。
以下は宮崎駿監督のインタビューの引用です。
ラストでジジとしゃべれなくなるというのは、分身がもういらなくなった、コリコの町でちゃんとやっていけるようになりました、という意味を持ってるわけです。
ジブリの教科書 魔女の宅急便 より引用
つまりジジが喋らないということは、キキの成長の証なのです。
キキが成長して自分自身の力で生きていけるからこそ、イマジナリーフレンドはいらなくなったというわけですね。
小さな子どもが大切にしていたぬいぐるみを手放せるようになるのと同じ感覚でしょうか。
キキが「コリコの町でやっていけるようになった」と確信できるのはあくまでもラストシーンです。
はじめてジジが言葉を失った場面では、むしろキキは不安を抱えた状態でした。
この経緯を踏まえると、以下のように解釈するのが正確かもしれません。
- はじめてジジが言葉を失った時
→魔力が弱まり、ジジの言葉が分からなくなった(映画の描写のとおり) - ラストシーンでジジが喋らない
→キキに魔力は戻ったが、ひとりで生きていけるキキはジジとの会話が必要ではなくなった
【原作の解釈】キキが恋をしたから
なお、原作でもジジは喋らなくなりますが、その理由は全く異なります。
原作では、ジジが喋らない理由について以下のように説明されているのです。
魔女が誰かに恋をするということは、新しい相手を見つけた証拠
つまり、キキはジジに代わる新たな相棒を見つけたというわけです。
ジジ自身も新たな相手を見つけるために出かけていくことになります。
キキとジジはそれぞれに恋をし、新たなパートナーを見つけるからこそ会話が不要になっていくのです。
なお、ジブリ版でもジジが喋らなくなる直前に、キキはトンボとの仲が深まり、ジジはリリーと出会います。
「恋をしたから」という理由にスコープは当てなかったものの、原作の設定も踏襲しているのでしょう。
ジジはその後、再び喋るようになったのか?
物語では喋らないままラストシーンを迎えたジジですが、その後再び喋るようになったのか気になりますよね。
ジブリ版ではキキの成長により、そのまま完全な猫になっています。
ただ一方で、原作ではジジはその後も魔女の猫として再び喋るようになるのです。
それぞれについて解説します。
【ジブリ版】ジジは普通の猫になってしまった
ジブリ版では、ジジは普通の猫になってしまいます。
ラストシーンでも喋ることなく「ニャー」と鳴いた場面にその意図が込められているのです。
この場面の絵コンテには、以下のようにはっきりと明記されています。
やっぱり言葉はもどらない、でもいいか・・
ほほえみ、ほほずりするキキ。ジジは完全な猫になってる。
この時のキキの「でもいいか」という心情や、余裕のある態度こそが成長の証とも見えます。
この瞬間にキキは、「喋るネコ・ジジ」を卒業したのです。
【原作版】ジジは魔女の猫として再び喋る
原作では、ジジは再びキキと仲良く暮らすようになります。
キキはトンボと結婚し、双子の子を持つ母になるのです。
ジジもリリーと家庭を築き、キキとジジの家族は仲良く幸せに暮らすというわけですね。
ジブリ版のラストと、原作のその後では設定は大きく異なりますが、これも素敵なハッピーエンドです。
関連記事(準備中):【魔女の宅急便】原作紹介!ストーリーの違いや映画のその後を解説
ジジが喋らない理由 まとめ
「ジジが喋らなくなった理由の真実は、キキが恋をしたからだ!」
「ジジが言葉を失った本当の理由は、キキが成長したからだ!」
ネット上にはこのような論調の解説が多く見つかりますが、実は真実はひとつではありません。
原作を宮崎駿監督なりに解釈して再構築したものがジブリ版『魔女の宅急便』なので、どちらも正しいと言うべきですね。
最後までご覧いただきありがとうございました。
当サイトでは、スタジオジブリ作品の解説・考察記事を多数投稿しています。
以下の記事ではジジはもちろん、『魔女の宅急便』の登場人物を一覧で紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
『魔女の宅急便』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『魔女の宅急便』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- ジブリの教科書5 魔女の宅急便(文春ジブリ文庫)
- ロマンアルバム 魔女の宅急便(徳間書店)
- スタジオジブリ絵コンテ全集 魔女の宅急便(徳間書店)
- ジ・アート・オブ 魔女の宅急便(徳間書店)
- ジブリの教科書5 魔女の宅急便(文春ジブリ文庫)
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過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。
ポチップ - ロマンアルバム 魔女の宅急便(徳間書店)
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インタビューや設定情報が記載された公式のムック本です。
ポチップ - スタジオジブリ絵コンテ全集 魔女の宅急便(徳間書店)
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『魔女の宅急便』の制作に使用された絵コンテです。
ポチップ - ジ・アート・オブ 魔女の宅急便(徳間書店)
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イメージボードやアフレコ台本等、制作時の資料が多数掲載されています。
ポチップ
なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。