【千と千尋の神隠し】成長する主人公・千尋の詳細設定を解説!

当記事では『千と千尋の神隠し』の主人公・千尋について解説します。

千尋は決して美少女でもなく、特殊な力も持たないごく普通の女の子です。

ジブリ公式本や関係者インタビューをもとに、意外と知られていない裏話もご紹介します。

『千と千尋の神隠し』の登場人物については以下の記事でまとめていますので、ぜひこちらも合わせてご覧ください。

筆者のプロフィール
  • スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
  • 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
  • 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」

当記事は結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。

目次

千尋(千)の特徴・設定

千と千尋の神隠し-スタジオジブリ 場面写真より
名前荻野 千尋
年齢10歳
一言プロフィール柊瑠美
声優ごくごく普通の10歳の女の子

千尋はごくごく普通のどこにでもいるような女の子です。

豚になった両親を救うため湯婆婆の元で「千」として働き、異世界で奮闘します。

声優には当時中学生の柊瑠美さんが抜擢されました。(柊さんの本職は女優で、千尋が初めての声優業です)

ここでは以下の観点で千尋の特徴を紹介します。

  • 可愛くないごく普通の女の子
  • 千尋は映画内でほとんど笑わない
  • 千尋が見せる数々の成長

順番にご覧ください。

可愛くないごく普通の女の子

千尋は宮崎駿作品ヒロインたちと比較すると目が小さく、鼻も低く描かれています。

要するに「ぶさいく」に描かれているわけですが、これは「普通の女の子」を主人公とする意図が込められているのです。

「この映画のねらい」として、宮崎駿監督は以下のようにコメントを残しています。

千尋が主人公である資格は、実は喰いつくされない力にあるといえる。

決して、美少女であったり、類まれな心の持ち主だから主人公になるのではない。その点が、この作品の特長であり、だからまた、十歳の女の子達のための映画でもあり得るのである。

ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し(文春ジブリ文庫)より

普通の女の子が主人公だからこそ、10歳の女の子に刺さる映画となるわけです。

実際に宮崎駿監督は、作画監督の安藤さんにも「普通の、どこにでもいる十歳の女の子を描きたいんだ」と伝えています。

これを受け、安藤さんは以下のようにインタビューで語っています。

映画の冒頭にブチャムクレた顔の千尋が出てきますが、そういうかわいくない少女が、物語が進むにつれてかわいくなっていくんじゃなくて、表情が少し豊かになったりすることによって、かわいく見えてくるということがこの作品にとって大事なことだと思って、その辺りをかなり意識したというか、そうなるように心掛けたつもりです。

具体的には丸顔で鼻が低くて目がそんなに大きくなくてというところをなんとか最後まで保とうとしたということなんですけどね(笑)

ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し(文春ジブリ文庫)より

千尋は映画内でほとんど笑わない

注意深く観察しないと気づけないのですが、千尋は物語を通してほとんど笑いません。

特に前半は、まったくと言っていいほど笑顔がないのです。

一見笑っているように見える場面でも、絵コンテを見ると「ニッコリとするゆとりはないが、笑顔はつくる」等と記載されており、作り笑いであることが分かります。

スタジオジブリ絵コンテ全集 千と千尋の神隠し(徳間書店)より

千尋が本当の笑顔を見せるのは、オクサレ様を救った晩の場面です。

アンマンを頬張る場面で「映画はじめての笑顔になって」と書かれています。

油屋で手柄を立てて、周囲から認められたことでようやく緊張の糸が解けたのでしょう。

スタジオジブリ絵コンテ全集 千と千尋の神隠し(徳間書店)より

千尋は両親を突然豚にされてしまい、異世界で働くことになりました。

本当は辛くて逃げ出したい境遇です。

笑顔が出るわけがないですよね。

千尋はジブリ作品の中でも、「笑わない主人公」なのです。

千尋が見せる数々の「成長」

千尋は物語を通して、数々の「成長」を見せています。

  • 文句ばかり言っていた女の子が、能動的に動けるようになる
  • お礼、お辞儀ができるようになる
  • もりもりと食事をとるようになる
  • 高所恐怖症を克服する

もう少し具体的に紹介しましょう。

文句ばかり言っていた女の子が、能動的に動けるようになる
千と千尋の神隠し-スタジオジブリ 場面写真より

物語の冒頭、千尋は引っ越しが嫌で不貞腐れていました。

両親のやることなすことに文句を言い、「いやだ」「帰ろう」を連呼するのです。

この千尋が油屋で働くことになって以降、一度も「いやだ」「帰りたい」とは発言していません
(「いやだ」と言ったら豚にすると湯婆婆に脅されたのもあると思いますが・・)

カオナシやハクを救うために自ら動ける、能動的な主人公に変貌しているのです。

お礼、お辞儀ができるようになる

油屋に到着したばかりの千尋は、お礼すら言えない女の子でした。

釜爺にお礼を言えず、リンに叱られた場面は印象的ですよね。

叱られて以降、千尋はしっかりとお礼・お辞儀を徹底しています。

この素直さや態度を改める速さは子どもらしく、千尋の特徴であるとも言えます。

もりもりと食事をとるようになる

千尋は屋台で両親に食事を勧められても拒否し、一口も口にしませんでした。

また、ハクのおにぎりを食べる場面の絵コンテでは「生まれてこの方、ずーっと食え食えと言われ続けてきた」とコメントが残っています。

千尋の手足は細く、しっかりと食事をとっていないのではと推測できます。

このような千尋が、ハクのおにぎりを涙を流しながらモリモリと食べるのです。

千尋の中に「生」への執念が芽生えた瞬間とも見ることが出来ますね。

高所恐怖症を克服する
千と千尋の神隠し-スタジオジブリ 場面写真より

千尋は釜爺の元に向かう際、おびえながら壁沿いの階段をゆっくりと降りました。

絵コンテでは「千尋は高所恐怖症」と書かれており、高いところは大の苦手であることがわかります。

こんな千尋が、ハクを救うためなら高所のパイプを駆け抜けるなど、驚くようなアクションを見せるのです。

これも釜爺の言う「愛」の力でしょうか。

千尋は高所恐怖症すら克服してしまいました。

千尋の「成長」をいくつか紹介しましたが、実は宮崎駿監督は「成長」という言葉を否定しています。

このエピソードについては、後半の「千尋に関する裏話」でご紹介します。

千尋に関する裏話

『千と千尋の神隠し』の映画を見ているだけでは分からない、千尋に関する裏話を紹介します。

ジブリ公式本の内容や関係者インタビューをもとに解説しますので、参考になれば幸いです。

『千と千尋の神隠し』は千尋の「成長物語」ではない

先ほど、千尋の数々の「成長」をピックアップしました。

  • 文句ばかり言っていた女の子が、能動的に動けるようになる
  • お礼、お辞儀ができるようになる
  • もりもりと食事をとるようになる
  • 高所恐怖症を克服する

ただ宮崎駿監督に言わせると「人間はそう簡単に成長なんてしない」というのです。

千尋の成長について、宮崎駿監督は以下のように語っています。

成長物語ではなくて、その子たちの中に本来あるものが、ある状況の中で溢れ出てくるという、そういう映画を作りたいって思ったんです。

千と千尋の神隠し 千尋の大冒険(ふゅーじょんぷろだくと)より

要するに千尋は成長したわけではなく、本来持っていた力を発揮したに過ぎないというわけです。

「成長しよう!」という成長物語ではなくて、「あなたにもできる」という励ましのメッセージが込められているのかもしれませんね。

水干の姿が千、普段着の姿は千尋

千尋は湯婆婆に名前を奪われ、「千」として働くことになりました。

「千」として働いている時は、「千尋」の記憶をしだいに失っている描写もありましたよね。

名前を奪うという行為は、呼び名を変えるということではなく、相手を完全に支配しようとする方法である

ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し(文春ジブリ文庫)より

物語の中では、「千尋」モードと「千」モードが混在していることになります。

「千尋」と「千」を見分ける方法として、「服」がポイントになることがロマンアルバムの中で明かされています。

原則的に、桃色の水干を着ているときは千だが、私服に触れると千尋に戻る。

暴走したカオナシと対峙したときは、ハクを助けにいくためにすでにボイラー室で私服に着替え、その上に水干を重ねており、彼女の意識は千ではなく千尋であったと思われる。

ロマンアルバム 千と千尋の神隠し(徳間書店)より

とはいえ、重ね着という裏技も使っていますので、パッと見で見分けるのは難しそうですね(笑)

カオナシが暴走して以降は、ほとんど常に「千尋」であったと考えられます。

モデルは宮崎駿監督の知りあいの女の子

千尋には明確なモデルが存在します。

宮崎駿監督の友人の娘をモデルとしているのです。

僕は等身大の主人公というものに魅力を感じません。千尋は等身大ではない。

そういう曖昧な言葉では言いたくない。

僕がちらっと知っている、友人の娘たちそのものです。

千と千尋の神隠し 千尋の大冒険(ふゅーじょんぷろだくと)より

その友人というのが、当時日本テレビの奥田誠治さんです。

奥田さんの娘の千晶さんが千尋のモデルとなっています。

「千晶の映画をやろうか」

千晶というのは、日本テレビの映画部でジブリの担当をしている奥田誠治さんの娘です。

当時ちょうど十歳。

ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し(文春ジブリ文庫)より

「千尋」の名前も「千晶」から来ていることは明らかですね。

実在する女の子をイメージしながら作られたからこそ、絶妙にリアルな主人公が生まれたのでしょう。

『千と千尋の神隠し』は千晶さんをモデルとした千晶さんのための映画だったのです。

そんな映画が当時の興行収入日本記録を達成するのだから、宮崎駿監督、恐るべしです。

物語の途中で千尋は別人になった?

千尋は物語の前半は、どこにでもいる普通の女の子でした。

どんくさく、少しわがままで、怖がりで、階段を下りるだけでもグズグズと時間をかけてしまいます。

この千尋がオクサレ様の場合以降、ガラリとキャラクターが変わるのです。

鈴木敏夫プロデューサーはインタビューで、「これは2本の映画なのでは」と語っています。

ともかく、第2部はカオナシと千尋の話になっちゃった。

この第1部と第2部は、僕に言わせると、話のテンポがあまりにも違いすぎるし、内容も違う。

これは、もしかしたら2本の映画なのでは‥‥と思ったのをよく覚えています。

千と千尋の神隠し 千尋の大冒険(ふゅーじょんぷろだくと)より

物語の後半の千尋は、まさに「ジブリのヒロイン」でした。

ナウシカやキキ、サツキのように前向きでひたむきな「ザ・主人公」とも言えるキャラクターに変貌します。

これが本来千尋が持っていた力、千尋の「成長」なのだと言えますが、確かにこの変化は面白いです。

【考察】千尋は最後に記憶を失ったのか

お父さんとお母さんを元に戻し、帰りのトンネルに入った後は千尋のセリフはありません。

千尋が油屋の世界の出来事を覚えているのかどうかは、はっきりとは分からない描写になっています。

ただ、ところどころに「記憶を失っているのでは?」と思われる描写が存在します。

その代表例がお母さんにしがみついて歩くシーンです。

スタジオジブリ絵コンテ全集 千と千尋の神隠し(徳間書店)より

絵コンテに「C58兼用」と書かれています。

これは物語序盤に、トンネルに入った時と同じカットを流用しています。

逞しくなったはずの千尋が来た時と同じようにお母さんにしがみついている様子は、「記憶を失った」と考える十分な根拠になります。

ただ、油屋での経験は単なる「夢」であり、無かったことになっているわけではありません。

これについて宮崎駿監督は以下のようにコメントしています。

僕は、あの世界は全部夢だったというふうにはしたくなかったんです。だからラストで現実の世界に戻ってきたら車の上に葉っぱが積もっていたり、千尋は気づいていないかもしれないけど、おばあちゃん(銭婆)がくれた髪留めは残しておこうと思ったんです。

ロマンアルバム 千と千尋の神隠し(徳間書店)より

このコメントのとおり、銭婆の髪留めはしっかりと描かれています。

千尋が振り返る時には髪留めがキラリと光り、小さい音ではありますが光る効果音まで加えられています。

千尋の経験は千尋とともにある、という明確なメッセージです。

千と千尋の神隠し-スタジオジブリ 場面写真より

この描写は「一度あったことは忘れないもんさ。思い出せないだけで」という銭婆の名セリフにつながります。

宮崎駿監督もインタビューで以下のようにコメントしています。

自分のやってきたことを全部覚えてる人っていると思いますか?いないでしょ。

でも銭場の「一度あったことは忘れないもんさ」という言葉通り、人間の記憶って思い出せないだけでどこかに残っているものだと思うんです。

ロマンアルバム 千と千尋の神隠し(徳間書店)より

総括すると、千尋はトンネルに入った後、油屋での記憶を失ってしまっていることは間違いないでしょう。

ただ、それは思い出せないだけで忘れてしまったわけではありません。

しっかりと千尋の力として、千尋の中に残り続けているのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

『千と千尋の神隠し』の記事執筆における参考書籍

まつぼくらぶでは『千と千尋の神隠し』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。

  • ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し(文春ジブリ文庫)
  • ロマンアルバム 千と千尋の神隠し(徳間書店)
  • スタジオジブリ絵コンテ全集 千と千尋の神隠し(徳間書店)
  • The art of Spirited away―千と千尋の神隠し(徳間書店)
  • 千と千尋の神隠し 千尋の大冒険(ふゅーじょんぷろだくと)
ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し(文春ジブリ文庫)

過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。

ロマンアルバム 千と千尋の神隠し(徳間書店)

インタビューや設定情報が記載された公式のムック本です。

スタジオジブリ絵コンテ全集 千と千尋の神隠し(徳間書店)

『もののけ姫』の制作に使用された絵コンテです。

The art of Spirited away―千と千尋の神隠し(徳間書店)

イメージボードやアフレコ台本等、制作時の資料が多数掲載されています。

千と千尋の神隠し 千尋の大冒険(ふゅーじょんぷろだくと)

独自インタビュー等、ここでしか知ることができない貴重な情報が掲載されています。
既に絶版となっており、プレミア価格がついている貴重な書籍です。
(当サイトも入手には苦労し、図書館でなんとか借りることができました)

なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。

千と千尋の神隠し スタジオジブリ場面写真

当記事の拡散は大歓迎です

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