当記事では『崖の上のポニョ』の主人公・宗介について解説します。
5歳という年齢でありながら、「ジブリ史上最もいい男」と評価されることもあるキャラクターです。
映画を見ているだけではわからない裏話も紹介しますので、参考になれば嬉しいです。
以下の記事では『崖の上のポニョ』のストーリーを徹底解説しています。
なかなかボリュームの多い記事ですが、この記事でポニョの理解が深まれば嬉しいです。
- スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
- 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
- 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
当記事は結末等のネタバレを含みますのでご注意ください。
『崖の上のポニョ』宗介の基本情報

本名 | 宗介 |
年齢 | 5歳 |
声優 | 土井洋輝 |
一言プロフィール | 純粋でまっすぐな男の子 |
宗介は『崖の上のポニョ』の主人公である5歳の男の子です。
ここでは、以下の観点で宗介の特徴を紹介します。
- しっかり者の5歳の男の子
- 声優は当時子役の土井洋輝さん
しっかり者の5歳の男の子
宗介は5歳の男の子ですが、とても自立したしっかり者です。
知識も豊富で、大人びた印象すら持つ主人公となっています。
宗介の注目ポイント
- 母のリサが落ち込んでいても落ち着いて励ます
- 町が洪水で沈み不安な中でも、ポニョとともに留守番できる
- モールス信号を使いこなし、父・耕一と交信できる
- 古代魚の名前を知っているなど、知識も豊富
こうして列挙してみると、かなりのしっかり者ですね。
とはいえ、あくまでも宗介は5歳の男の子です。
ポニョとの最初の別れのシーンでは泣き叫び、リサを探す場面でも涙を流します。
時折見せる子どもらしい様子も、宗介の魅力です。
声優は当時子役の土井洋輝さん
宗介の声優は当時子役として活躍していた土井洋輝さんです。
ジブリ作品は『崖の上のポニョ』のみの出演ですが、見事に宗介を演じきりました。
映画パンフレットには土井洋輝さんのコメントも掲載されています。
宗介は、かわいいし、優しくて、しっかりしているから、なりきって頑張りました。
崖の上のポニョ 映画パンフレット より引用
子役として『ホームレス中学生』(2008年)に出演するなど活躍していましたが、2009年以降の芸能活動の形跡は見当たりませんでした。
宗介に関する裏話
ここからは映画を見ているだけではわからない、宗介に関する裏話を紹介します。
- モデルは夏目漱石の「門」
- 宗介は約束を守り抜く男
- 5歳にして宗介は「モテる」
モデルは夏目漱石の「門」
映画パンフレットや数々のインタビューで明らかになっていますが、宗介の名前の由来は夏目漱石です。
夏目漱石の『門』の主人公の名前が「宗介」なのです。
『崖の上のポニョ』企画当時、宮崎駿監督は夏目漱石全集を読みふけっており、その影響を受けています。
以下は鈴木敏夫プロデューサーのインタビューの抜粋です。
宮さんの頭の中にひとつのタイトルが思い浮かんできた。(中略)
「鈴木さんさ、思いついたよ」と言います。
「『崖の下の宗介』っていうんだ」「へえ、いいじゃないですか」
あれこれ話すうちに、やっぱり下より上の方がいいということになって、『崖の上の宗介』という仮のタイトルができました。
ジブリの教科書 崖の上のポニョ より引用
『門』の主人公の野中宗助は、妻と弟と三人で崖の下の小さな家に住んでいたのです。
ここから着想を得て、『崖の下の宗介』となり、最終的には『崖の上のポニョ』となったわけです。
名前の由来は夏目漱石ですが、実はそのキャラクターにもモデルがいることを宮崎駿監督は明かしています。
実は、宗介の側もモデルを発見できて。
1歳の子に出会ったんですけど「あ、こいつはほんとにまっすぐだぞ」と思ったんです(笑)
続・風の帰る場所 より引用
身近な男の子からヒントを得て、宗介のキャラクターを仕上げていったのですね。
ちなみに鈴木敏夫プロデューサーのインタビューによると、宗介のモデルには以下のような説も存在します。
宗介のモデルと言える人物(鈴木敏夫談)
- 宮崎吾朗(宮崎駿監督の息子)
→「宗介は5歳の吾朗だ」と宮崎駿監督が当初は語っていたらしい - スタッフの息子
→これが宮崎駿監督の言う「1歳の子」と思われます - 美術監督の吉田昇さん
→宮崎駿監督が「宗介のモデルは吉田くん」と発言したらしい
宮崎駿監督は自分自身や周囲の人をキャラクターに投影することが多いことで知られています。
宗介にも様々な人を重ねながら、キャラクターを作りこんでいったのでしょう。
宗介は約束を守り抜く男
物語序盤の宗介の以下のセリフは、実は超重要なセリフとなっています。
宗介「大丈夫だよ。ぼくが守ってあげるからね」
ポニョを守ると約束する宗介ですが、この「約束」について宮崎駿監督は以下のように語っています。
約束は守れないものなんですよ。
例えば子供がヒヨコを手に入れて、自分でなんとか守ろうとする。でもヒヨコは死んでしまうということがありますよね。
子供は次々と約束を守らずに育たざるを得ないんです。でもこの映画では、とりあえず約束を守りきった子供を描いてみたいと思いました。
ジブリの教科書 崖の上のポニョ より引用
つまり『崖の上のポニョ』は、「宗介が約束を守る」ということがひとつのテーマなのです。
宗介は実際には、一度はポニョを守り切れずにフジモトにポニョを攫われてしまいます。
それでもクライマックスではまっすぐな愛情でポニョを「大好き」と宣言し、ポニョを守りました。
宗介「大丈夫だよ。ぼくが守ってあげるからね」
何気ないセリフではありますが、『崖の上のポニョ』は宗介がこの約束をまっすぐに守りきる物語なのです。
5歳にして宗介は「モテる」
物語の序盤、保育園に到着した宗介には続々と女の子が声をかけてきます。
実はこの場面、絵コンテでは「宗介はもてるんです」と補記されています(笑)
「優しい・賢い・まっすぐ」といった宗介の特徴を踏まえると、モテモテでも不思議ではありませんね。
なお、作画監督・近藤勝也さんのインタビューで宗介は宮崎駿監督の理想の男の子であることが明かされています。
彼は「世界に一人でも、こういう男の子がいればいいのに」という宮崎さんの理想ですね。
ジブリの教科書 崖の上のポニョ より引用
宮崎駿監督作品にはハウルやハク等、イケメンキャラクターも存在しますが、実は宗介を推す声もチラホラ聞こえます。
ポニョをまっすぐ愛する姿に心を捕まれるファンは多いのかもしれませんね。
宗介に関するストーリーの謎を考察
『崖の上のポニョ』を見ていて、以下のような疑問を感じた方もいるのではないでしょうか。
- 宗介が受けた試練とは
- 宗介はなぜリサを呼び捨てにする?
- 宗介とポニョはその後どうなった?
このような宗介に関する謎について、順番に解説します。
宗介が受けた試練とは?
嵐の夜を超え、宗介とポニョが目を覚ます場面、ここから宗介の試練は始まります。
絵コンテでは「かくて宗介の試練の幕はあがる」とでかでかと書かれています。
嵐の日の夜、グランマンマーレとフジモトの不思議な会話は印象に残っているのではないでしょうか。
グランマンマーレ「ポニョを人間にしてしまえば良いのよ!」
フジモト「ええ!?」
グランマンマーレ「男の子の心が揺るがなければ、ポニョは人間になって魔法を失うわ」
フジモト「しかしあの方法は、しくじるとポニョは泡になってしまう・・」
この会話こそが、宗介の試練です。
この設定は、アンデルセンの『人魚姫』の設定を引用しています。
人魚姫は愛していた王子と結ばれることができず、泡となって消えてしまう物語です。
『崖の上のポニョ』に影響を与えた作品については以下の記事でまとめていますので、ぜひ合わせてご覧ください。
つまりポニョは人魚姫と同じ立場であり、宗介の揺るぎない愛がなければ泡となって消えてしまうのです。
ポニョの正体を知ったうえで、まっすぐにポニョを愛することができるか、それが宗介に与えられた試練でした。
この背景を知ったうえで『崖の上のポニョ』を見ると、最後のグランマンマーレの質問の意図が分かります。
「あなたはポニョがお魚だったのを知っていますか」
「ポニョの正体が半魚人でもいいですか」
グランマンマーレは宗介の揺るぎない愛を確かめたわけですが、宗介はまっすぐに迷わず回答しました。
宗介「おさかなのポニョも、半魚人のポニョも、人間のポニョもみんな好きだよ」
宮崎駿監督はこの試練について、「どんなポニョであっても引き受けるという約束」であると続・風の帰る場所のインタビューで語っています。
宗介のまっすぐな回答をもって、ポニョは人魚姫とは異なりハッピーエンドを迎えたわけです。
なお、宮崎駿監督に言わせれば、宗介とポニョの試練は出会った時から始まっていたそうです。
そういう意味ではずーっと初めから試練が始まっているんだけど。
実は、最初にポニョが水をかけた時に笑ってるんですよね、宗介が。そこで「ひゃあっ」って飛び退いたら、もう成り立たないんですよ。
あの子だけ水をかけられても喜んでるんですよ。変な子ですよね。
続・風の帰る場所 より引用
宗介は出会った時から、一度も揺らいでいなかったということですね。
宗介はなぜリサを呼び捨てにする?
宗介は母親のリサを「リサ」、父親の耕一を「耕一」と名前で呼びます。
お母さんお父さんでも、ママパパでもない名前呼びについては、違和感を感じた方もいるでしょう。
これについて、宮崎駿監督はどのような意図をこめているのでしょうか。
ロマンアルバムにヒントとなるリサに関する記載が見つかりました。
宮崎監督いわく、「発展途上の母親というか、幼い子どもを持った若い女性」らしい。
崖の上のポニョ ロマンアルバム より引用
ジブリの教科書に掲載されたインタビューでは、宮崎駿監督の「母親観」も語られています。
お母さんとは、子供を守ってくれる絶対的な存在です。でも今の母親は、たまたま子供がいる若い女性だと思うんです。だからリサと宗介もお母さんと子供の関係とは少し違いますよね。(中略)
彼女はパニックにならずに今を乗り切ろうとする。現代は地質学的にも激烈な時代に入ったと思いますから、そういう時にリサのような母親であって欲しい。
そういう僕の願望も、彼女には込められています。
ジブリの教科書 崖の上のポニョ より引用
つまり宮崎駿監督は、「守ってくれる母親」と「守られる子供」という関係を意図的に避けたのです。
それぞれが自立した、別々の人間であることをはっきりさせるため、「お母さん」という呼び方を避けたのでしょう。
宗介とポニョはその後どうなった?
宗介は試練を乗り越えたことで、ポニョの身元を引き受けることになります。
宮崎駿監督は宗介を「約束を守り抜く男」として描いていますから、当然二人は生涯をともにすることになるでしょう。
ポニョは女性として強くたくましくなり、宗介は尻にひかれていくであろうことが宮崎駿監督によって語られています(笑)
女ですよ、ポニョは。で、宗介は男です。
男の悲哀を十分背負ってこれから生きていくんですよ(笑)
ポニョはますます女になるんですけど。恐ろしいことに。
続・風の帰る場所 より引用
『崖の上のポニョ』は登場人物が亡くなっている等の都市伝説も存在します。
※都市伝説の詳細はこちら
それなりに根拠も多く信憑性の高い都市伝説ではありますが、基本的に『崖の上のポニョ』はハッピーエンドの物語です。
ポニョと宗介は二人仲良く、宗介は苦労しながら生きていくと考えて良いのではないでしょうか。
『崖の上のポニョ』の記事執筆における参考書籍
まつぼくらぶでは『崖の上のポニョ』の記事を執筆するにあたり、主に以下の書籍を参考にしています。
- ジブリの教科書15 崖の上のポニョ(文春ジブリ文庫)
- ロマンアルバム 崖の上のポニョ(徳間書店)
- スタジオジブリ絵コンテ全集 崖の上のポニョ(徳間書店)
- THE ART OF Ponyo on the Cliff(徳間書店)
- 続・風の帰る場所(ロッキング・オン)
- ジブリの教科書15 崖の上のポニョ(文春ジブリ文庫)
-
過去のインタビュー内容等を参考、引用しています。
ポチップ
- ロマンアルバム 崖の上のポニョ(徳間書店)
-
インタビューや設定情報が記載された公式のムック本です。
- スタジオジブリ絵コンテ全集 崖の上のポニョ(徳間書店)
-
『崖の上のポニョ』の制作に使用された絵コンテです。
ポチップ
- THE ART OF Ponyo on the Cliff(徳間書店)
-
イメージボードやアフレコ台本等、制作時の資料が多数掲載されています。
著:スタジオジブリ¥3,038 (2023/04/28 15:07時点 | Amazon調べ)ポチップ
- 続・風の帰る場所(ロッキング・オン)
-
ここでしか語られない、独自インタビューが掲載されています。
ポニョについても70ページ近くのボリュームで語られており、参考になります。
ポチップ
なお、作品の画像はスタジオジブリ公式サイトから無償提供されている場面写真を使用しております。