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【書籍レビュー】『ポニョCODE』(渡辺真也)の内容と感想

ポニョCODE

当記事では書籍『ポニョCODE 崖の上のポニョに隠された宮崎駿の暗号』についてレビューします。

本の内容のネタバレを含みますので、ご留意のうえご覧ください。

筆者のプロフィール
  • スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
  • 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
  • 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
目次

『ポニョCODE 崖の上のポニョに隠された宮崎駿の暗号』の内容

著者名渡辺真也
出版社三元社
発売日2021/12/8
ページ数432ページ

『ポニョCODE』は美術史博士であり映画監督でもある、渡辺真也さんの著書です。

その豊富な文化知識をもとに、様々な切り口で『崖の上のポニョ』の考察を繰り広げる1冊です。

著者(渡辺真也)の基本情報

渡辺真也さんの簡単なプロフィールは以下のとおりです。

1980年沼津市生まれの映画監督/インディペンデント・キュレーター。ニューヨーク大学大学院シュタイナート教育学部修士課程修了後、イーサン・コーヘン・ファインアートにてギャラリー・マネージャーを2年務め、アートキュレーターとして国民国家に焦点を当てた国際美術展をアメリカ、ドイツ、日本等で開催。東京都歴史文化財団東京文化発信プロジェクト室を経て文化庁新進芸術家海外研修員(2011-2013)。ベルリン技術経済大学造形文化学部で4年間教鞭を執る傍ら、『ユーラシアを探して―ヨーゼフ・ボイスとナムジュン・パイク』(三元社)にてベルリン芸術大学造形学部博士課程修了。美術史博士。初監督映画『Soul Odyssey―ユーラシアを探して』(2016)でインドネシア世界人権映画祭優秀作品賞、ストーリー賞を受賞。主な美術展に「アトミックサンシャインの中へ―日本国平和憲法第九条下における戦後美術」(2008-2009)、「ナムジュン・パイク 2020年 笑っているのは誰 ?+?=??」(2016-2017)、「はじまりの線刻画―アイルランド・スカンジナビアから奄美群島へ」(2018)等。テンプル大学講師。

『ポニョCODE』巻末より引用

豊富な経歴ですが、メインはキュレーター(≒学芸員)として活動しているようです。

美術史博士であり、要するに美術史・文学のプロフェッショナルです。

本書のあとがきによると、渡辺真也さんが宮崎駿監督に興味を持ったのは26歳の頃だったそうです。

渡辺さんは1980年生まれですので、だいたい2006年頃、ポニョ公開(2008年)の少し前ですね。

発売日は2021年ですが、10年以上に渡ってじっくりと練られた考察本となっています。

本書に書かれている主な内容

『ポニョCODE』は崖の上のポニョの考察本ですが、その内容は少し難しいです。

考察といっても、いわゆる噂話や都市伝説のようなエンタメ的な内容ではなく、学術的な考察となっています。

『崖の上のポニョ』を本気で勉強する構成になっており、様々な文学作品と関連づけて説明されています。

『ポニョCODE』の目次をいくつか抜粋してみましょう。

  • ワーグナーのワルキューレから考える
  • 日本美術史から考える
  • 漱石の暗号から考える
  • 司馬遼太郎の『坂の上の雲』から考える
  • 「生まれてきてよかった」から考える

夏目漱石や司馬遼太郎、ワーグナーをはじめ、三島由紀夫や寺山修司、等々、様々な文学・美術に触れながら説明が進みます。

この本は、研究者の方でなくても読めるよう、出来るだけ間口を広く取って、読み終えた時には、教養の階段を少し登ってしまったと感じられるように心がけました。

『ポニョCODE』はじめに より引用

筆者のこの言葉のとおり、まさに「教養の階段」を登れるような内容です。

様々な文学作品のあらすじも合わせて解説してくれるため、文学に詳しくなくても理解することができます。

『ポニョCODE 崖の上のポニョに隠された宮崎駿の暗号』の感想

ここからは、実際に筆者が『ポニョCODE』を読んだ感想を語らせてください。

深すぎるポニョの学術的考察

『ポニョCODE』を読んだ率直な印象は、「ジブリ作品をここまで深く考察した本は始めて読んだ」ということです。

宮崎駿監督の無意識領域にまで踏み込むということをテーマにしているため、宮崎駿監督がインタビューで語ったこと以上に深い考察が行われています(宮崎駿監督があまり多くを語っていないということもありますが)

ちなみに渡辺真也さんは、いちど『崖の上のポニョ』論を宮崎駿監督に手紙で送っています。

以下、本書あとがきからの引用です。

そこで私は、私が考える『崖の上のポニョ』論を七ページにまとめ、日本に帰国した際にお話を伺わせてもらえないか、とお手紙を添えて、ドイツから郵送しました。

すると、一時帰国中の私の携帯に宮崎監督のアシスタントから電話があり、手紙への謝意を表明して下さった後、「宮崎監督から、一言メッセージです。『俺は違う』」とのメッセージを伝えられたのでした。

『ポニョCODE』あとがき より引用

その時は宮崎駿監督に「違う」と否定されているのですね。

この当時の手紙を磨き上げた結果が『ポニョCODE』に繋がるわけですが、本書の内容はあくまでも考察にすぎません。

宮崎駿監督が認めている「真相」というわけではない点は留意しましょう。

正直なところ、「なるほど!」と思わされる考察もあれば、「それはこじつけすぎ・・」と思わされる考察もありました。

それでも『崖の上のポニョ』をここまで学術的に深く考察しているものは他にはありません。

『崖の上のポニョ』を学問したいかたにはおすすめです。

文学に詳しくなくても読みやすい構成

『ポニョCODE』は基本的に文学作品や美術と、『崖の上のポニョ』の共通点を解き明かす形で進んでいきます。

そのため、文学や美術の知識が豊富であるほど理解しやすい1冊です。

とはいえ、各文学作品のあらすじもセットで解説してくれるため、知識がなくてもスラスラ読むことができます。

私自身、あまり文学の知識は豊富ではありませんが、ちゃんと最後まで読むことができました。

『ポニョCODE 崖の上のポニョに隠された宮崎駿の暗号』 まとめ

『崖の上のポニョ』をじっくりと学んでみたい。

そんな方に『ポニョCODE』はおすすめです。

決してサラッと読める内容ではありませんが、他では絶対に読めない考察を味わうことができます。

宮崎駿監督をはじめ、ジブリ公式のお墨付きを得られていない点は注意が必要ですが、読み応えのあるジブリ本です。

なお、以下の記事では数々のジブリ本を紹介しています。

筆者自身が実際に読んだものをまとめていますので、合わせてご覧いただければ嬉しいです。

当記事の拡散は大歓迎です

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