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【書籍レビュー】『エンピツ戦記』(舘野仁美)の内容と感想

エンピツ戦記

当記事では書籍『エンピツ戦記~誰も知らなかったスタジオジブリ』についてレビューします。

本の内容のネタバレを含みますので、ご留意のうえご覧ください。

筆者のプロフィール
  • スタジオジブリから徒歩圏内の小金井市在住のジブリオタク
  • 好きな場所は三鷹の森ジブリ美術館
  • 最も好きな作品は「風の谷のナウシカ」
目次

『エンピツ戦記』の内容

『エンピツ戦記~誰も知らなかったスタジオジブリ』は、スタジオジブリで27年間アニメーターとして働いた舘野仁美さんによる回顧録です。

舘野さんだからこそ語ることができる内容が満載で、ジブリファン・アニメファンにはたまらない内容となっています。

著:舘野 仁美, 著:平林 享子, その他:平林 享子
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著者(舘野仁美)のプロフィール

舘野さんの簡単なプロフィールは以下のとおりです。

『となりのトトロ』以降の大半のスタジオジブリ作品に、動画チェックとして関わっています。

著者名舘野仁美
生年月日1960年12月13日
職業アニメーター(動画チェック)
主な作品『となりのトトロ』『魔女の宅急便』『おもひでぽろぽろ』『紅の豚』『海がきこえる』『平成狸合戦ぽんぽこ』『もののけ姫』『ホーホケキョ となりの山田くん』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『ゲド戦記』『崖の上のポニョ』『風立ちぬ』『思い出のマーニー』等

まさにスタジオジブリを支え続けてきたスタッフというわけです。

(参考)動画チェックとは・・?

本書の言葉を借りると、動画チェックとは「動画の品質管理をする人」です。

  • 原画マン  : アニメの動作のポイント、基本になる絵を描く人
  • 動画マン  : 原画と原画をつなぐ間に入る絵を描く人
  • 動画チェック: 動画の仕上がりを確認し、修正を行う人

なお、『エンピツ戦記』は舘野さんの回顧録を、平林享子さんが編集・構成を行っています。

平林さんは当時スタジオジブリ出版部の編集者で、広報誌『熱風』等を担当していました。

本書に書かれている主な内容

『エンピツ戦記』の章立ては以下のとおりです。

  • エンピツ戦士、ジブリ王国の門をくぐる
  • ジブリの森で宮崎監督に雷を落とされる
  • 師匠たちに怒られながら、腕をみがく日々
  • トレスマシンと格闘し、スケジュールに追いかけられる
  • 光があれば、闇もある。表現者はなにを考え、どう動くべきか
  • いいアニメーターの条件とは?教える立場になって思ったこと
  • ジブリを巣立つ日。そして人生は続く

また、この他に鈴木敏夫プロデューサーが寄稿した「メイちゃんの誕生」等も収録されています。

こうした構成で、舘野さんがスタジオジブリでの仕事を振り返ります。

宮崎駿監督や高畑勲監督に関するエピソードはもちろん、スタジオジブリを支えたスタッフ達のエピソードも紹介されます。

色職人の保田道世さん、天才アニメーター金田伊功さん等々、有名スタッフのエピソードも多かったのは嬉しいポイントでした。

もちろん、スタジオジブリ作品に関する裏話も登場します。(のちほど、感想と合わせて紹介します)

『エンピツ戦記』の感想

『エンピツ戦記』は数あるジブリ本の中でも、非常に満足度の高い1冊でした。

舘野さんだからこそ語ることができる、ここだけの話で溢れているのです。

ここでは以下の観点で、『エンピツ戦記』の感想を語らせてください。

  • この本ならではのジブリ映画の裏話
  • スタジオジブリの壮絶な仕事ぶり

この本ならではのスタジオジブリの裏話

数々のジブリ本に目を通してきた筆者ですが、本書で初めて見るエピソードが満載でした。

特に面白かったエピソードを、列挙してみます。

  • 『風立ちぬ』の菜穂子に感情移入した宮崎駿監督は、「菜穂子を死なせない」と言い出した
  • 『紅の豚』のジーナの歌に聞き惚れるマンマユート団は、原画マンの遊び心で股間に手を当てている
    (映画の画面上ではちょうど隠れている部分)
  • 『紅の豚』のフィオのチェック柄の衣装の作画が大変だったので、無地の服を提案したら「ダメだ!フィオの衣装は花嫁衣裳なんだから!」と宮崎駿監督に怒られた
  • 『千と千尋の神隠し』の千尋の両親は「カードがあれば何でも買える」と思っている現代の消費者を象徴している

宮崎駿監督や高畑勲監督のインタビューは数多くありますが、こうしたエピソードが語られることはなかなかないでしょう。

また、宮崎駿監督のエピソードで特に驚いたのが「鳥の飛び方」の話です。

空から舞い降りて翼をたたんだ一羽の水鳥に向かって、宮崎さんはこう言ったのです。

「おまえ、飛び方まちがってるよ」

<えええーっ!?>

私は心の中で驚きの声を上げました。本物の鳥に向かって、おまえの飛び方はまちがっているとダメ出しする人なのです、宮崎さんは。

エンピツ戦記より引用

宮崎駿監督が、ただ現実をそのまま描くのではなく、理想の「リアル」を探求していることが分かるエピソードです。

『エンピツ戦記』は面白いエピソードがテンポよく繰り広げられるため、非常に読みやすい1冊でした。

楽しいエピソードが満載で、1周目は3時間もかからずあっという間に読み切ってしまったほどでした。

スタジオジブリの壮絶な仕事ぶり

『エンピツ戦記』では、スタジオジブリの壮絶な仕事ぶりも感じ取ることができます。

本来は毒舌で気が強い一面のあるらしい舘野さんですが、『エンピツ戦記』の表現は平林さんの手によって柔らかく編集されています。

それでも、スタジオジブリのストイックで過酷な仕事を感じ取ることできました。

  • 宮崎駿監督が激怒したエピソード
  • 高畑勲監督が激怒したエピソード
  • 監督やスタッフの間で板挟みになったエピソード

等々、舘野さんの実体験が語られています。

正直、時代が違えば「パワハラ」と言われてしまうだろうという表現も存在しました(宮崎駿監督がスタッフの絵をゴミ箱に放り込む話等)

一見理不尽に見える要求や叱責も、それだけ本気で作品に向き合っていた証拠なのでしょう。

なお、宮崎駿監督は怒鳴り散らした後は、必ず後でこっそりフォローがあるようです(笑)

『エンピツ戦記』 まとめ

あっという間に読み切ってしまうほど、楽しめる1冊です。

ジブリファンはもちろん、アニメーター志望の方やアニメファンの方でも楽しめる内容でしょう。

著:舘野 仁美, 著:平林 享子, その他:平林 享子
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自信を持っておすすめできるジブリ本ですので、この記事がきっかけで興味を持っていただけたら嬉しいです。

なお、以下の記事では数々のジブリ本を紹介しています。

筆者自身が実際に読んだものをまとめていますので、合わせてご覧いただければ嬉しいです。

当記事の拡散は大歓迎です

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